歯周病予防の基本と言えば、やはり毎日丁寧なブラッシングをすることにより、口内にプラークを溜めないことです。
また、より歯周病を防ぎたいのであれば、栄養のバランスが良い食生活も実現しなければいけません。
今回は、そんな栄養素の一つであるマグネシウムと歯周病の関係を中心に解説します。
マグネシウムの概要
マグネシウムは、体内で約300種類以上もの酵素の働きを助けるミネラルの一種です。
地球上で6番目に多い元素であり、さまざまな成分と反応した形で広く存在するマグネシウムは、酸化物、水酸化物、フッ化物、リン酸塩、炭酸塩などがあります。
これらは、すべて水に溶けにくいという性質を持っています。
また、人間の体内には、約25gのマグネシウムが存在し、そのうち50~60%は骨に存在して、カルシウムやリンなどとともに骨をつくっています。
そして、20%ほどは筋肉中に存在し、その他の残りは脳や神経、肝臓、血液、細胞血液にタンパク質と結合した形で分布し、酵素の働きを助け、細胞で行われる機能に関わっています。
マグネシウムが全身に与える効果
マグネシウムが全身に与える効果は主に以下の4つです。
・丈夫な骨の維持
・高血圧予防
・心疾患予防
・精神安定効果
先ほども少し触れましたが、マグネシウムは骨や歯に多く含まれていて、カルシウムがきちんと行き届くように調節してくれています。
また、動脈を弛緩させ、高血圧を予防する効果や、筋収縮をスムーズにし、心疾患を予防する効果などもあります。
その他、神経の興奮を抑え、神経伝達を正常に保つ働きも持っています。
マグネシウムと歯周病の関係性
血中のマグネシウム濃度が低下すると、生命を維持するために、骨からマグネシウムが放出されます。
こちらは、歯を支える歯槽骨の形成を阻害することにつながりかねません。
また、マグネシウムが不足し、歯槽骨がうまく形成されないと、歯茎に与えられる栄養が不足し、歯茎の血行も悪くなります。
その結果、歯周病による歯茎の炎症や出血といった症状がひどくなったり、ダメージを受けた部分が修復されなかったりすることも考えられます。
もちろん、このようなマグネシウム不足が続くと、軽度の歯肉炎から、重度の歯槽膿漏にまで発展してしまうリスクもあります。
マグネシウム不足は虫歯の悪化にもつながる
アメリカのとある研究では、“歯は単なる固形物ではなく、歯の神経を通じて歯の表面のエナメル質まで身体の栄養素が行き渡っていて、血液循環のようなものがある”ということがわかっています。
そのため、歯の血液循環が正常であれば、虫歯になりにくく、逆に循環が滞ってしまう方は、虫歯のリスクが高くなったり、虫歯の進行が早くなったりするおそれがあります。
また、このような循環の停滞を引き起こしてしまう主な原因としては、以下のことが挙げられます。
・砂糖の過剰摂取
・ストレス
・運動不足
・薬剤服用
・ビタミン、ミネラル(マグネシウム)不足
これらの中でも、特に砂糖の過剰摂取による血糖値の急上昇や、ミネラル(マグネシウム)不足は、血液循環の停滞につながりやすいです。
つまり、マグネシウム不足は、歯周病だけでなく、虫歯のリスクも高めてしまうということです。
マグネシウム不足によるその他のデメリット
マグネシウムが不足すると、虫歯や歯周病のリスクが高まるほか、不整脈が生じやすくなり、慢性的に不足すると虚血性心疾患、動脈硬化などのリスクも高まります。
また、吐き気や精神障害などの症状が現れたり、テタニーという筋肉の痙攣を起こしやすくなったりします。
さらに、近年は長期的なマグネシウムの不足が、骨粗しょう症や心疾患、糖尿病、高血圧などの生活習慣病のリスクを高める可能性も示唆されていて、今後さらに研究が進められることが期待されています。
マグネシウムを豊富に含む食品
マグネシウムは、海藻などの藻類に多く含まれています。
例えば、可食部100gあたりで言うと、あおさの素干しの3,200mg、青のりの1,400mgが特に多く、普段の食事に採り入れやすいひじきにも、640mgのマグネシウムが含まれています。
その他、マグネシウムは魚介類や種実類にも豊富です。
具体的には、魚介類ではさば缶や桜エビ、生ガツオなど、種実類ではゴマやアーモンドなどに多く含まれます。
ちなみに、1日のマグネシウムの推奨量は、男性で約340~370mg、女性で約270~290mgと設定されています。
しかし、実際の成人におけるマグネシウムの1日の摂取量平均は243.9mgであり、多くの現代人において、摂取量は不足しています。
そのため、上記のような食材を積極的に摂取しましょう。
まとめ
ここまで、マグネシウムと歯周病の関係性を中心に解説しましたが、いかがでしたでしょうか?
歯周病予防に必要な栄養素は、タンパク質やカルシウム、ビタミンなどほかにもたくさんありますが、マグネシウムは不足することが多いミネラルであるため、意識して摂取してください。
また、マグネシウムは、歯周病だけでなく、虫歯やその他多くの全身疾患を予防する働きもあるため、摂取しておいて損はありません。