歯周病を発症する原因はさまざまですが、その一つとして喫煙が挙げられます。
タバコを吸うことによって血管が収縮され、歯周ポケットの中で歯周病菌が繁殖しやすくなります。
では、紙巻きタバコではなく、加熱式タバコの場合、歯周病のリスクは高まるのでしょうか?
今回はこちらの点を中心に解説します。
そもそも加熱式タバコとは?
加熱式タバコとは、タバコ葉を燃焼させるのではなく、専用機器等を用いて加熱することで、タバコベイパーと呼ばれる蒸気を発生させる製品を指しています。
従来の紙巻きタバコは、タバコ葉やタバコ葉を用いた加工品に火をつけることによって燃焼煙を発生させる一方、加熱式タバコは火をつけることなく、蒸気を発生させています。
こちらが紙巻きタバコと加熱式タバコの大きな相違点です。
また、加熱式タバコと似たようなものに電子タバコがありますが、これらはまったくの別物です。
電子タバコは、タバコ葉ではなくリキッド(溶液)を電気で加熱することによって蒸気を発生させる製品であり、英語圏ではVAPE(ベイプ)と呼ばれています。
加熱式タバコにおける歯周病のリスクは?
紙巻きタバコにおける歯周病のリスクは、もはや周知の事実ですが、加熱式タバコの場合、歯周病への影響にはどのような変化があるのでしょうか?
加熱式タバコは、従来のタバコに比べると、タールなどの有害物質が少ないと言われています。
副流煙が少なく、ニオイを気にする方にも人気です。
しかし、加熱式タバコにもタールやニコチンは含まれていて、血流が悪化したり、歯茎の組織を破壊したりすることに変わりはありません。
また、タールの量が減少することは、非常に良いことのように思いますが、そのせいで歯周病の症状がハッキリ感じられるようになることもあります。
タールは有害物質ではありますが、炎症を抑制する作用、ウイルスに対抗する作用などを持っていて、こちらが減少することにより、これまで紙巻きタバコによる歯周病の症状が抑えられていた部分が、一気に表面化するおそれがあります。
加熱式タバコには紙巻きタバコと同じような健康被害もある
加熱式タバコは、紙巻きタバコと比べて歯周病のリスクが低いわけではありません。
その上、紙巻きタバコと同様の健康被害もあると考えられています。
紙巻きたばこにおける発ガンリスクが極めて高いのは、よく知られています。
国立がん研究センターによると、男性のガンの約23.6%、女性のガンの約4.0%は喫煙によって引き起こされているという報告があります。
加熱式タバコの主流煙に含まれる有害物質の量は、紙巻きタバコと比べれば少ないという報告もありますが、その一方で、加熱式タバコが紙巻きタバコよりも発ガンリスクが低いという根拠は現在のところありません。
電子タバコの歯周病のリスクについて
加熱式タバコは、紙巻きタバコと同じように歯周病のリスクを持っていますが、似たような構造である電子タバコはどうでしょうか?
日本で販売されている電子タバコは、ニコチンが一切含まれていません。
ニコチンを入れると、医薬品医療機器等法の許可が必要になるからです。
これだけ聞くと、あまり歯周病のリスクがないように思いますが、電子タバコはニコチンが入っていない代わりに、食品添加物が含まれています。
具体的には、リキッドの成分として、医薬品の基材や食品添加物の成分として使われる植物性グリセリン、医薬品や化粧品などに使われるプロピレングリコールが使用されています。
これらの成分は安全性が高いとされていますが、あくまで食品添加物として使用する分には安全性が高いというだけであって、加熱して肺の奥に吸い込んだときの安全性まで保証されているわけではありません。
また、ニューヨーク大学の研究チームが国際学術誌において発表した論文によると、電子タバコ利用者の口内には、歯周病を進行させる細菌の割合が非喫煙者に比べて高かったことが明らかになっていて、時間とともに歯周病を悪化させる可能性があるとの報告がされています。
【結論】歯周病予防にはタバコをやめるのが一番
従来の紙巻きタバコでも、加熱式タバコでも、ニコチンは含まれていて、微量のタールでも血流は悪くなるため、歯周病を予防するには、やはりどのタイプでもやめるのが一番です。
電子タバコについても、吸わないに越したことはありません。
また、歯科クリニックでは、禁煙準備やニコレット、ニコチンパッチの使用、禁煙継続カウンセリングなどを行っているケースもあるため、自分自身で禁煙できる自信がないという方は、ぜひ受診してみてください。
まとめ
ここまで、加熱式タバコにおける歯周病のリスクを中心に解説しましたが、いかがでしたでしょうか?
「紙巻きタバコより加熱式タバコの方が安全」という認識は、この機会に捨てることをおすすめします。
また、歯周病のリスクに関しても、わざわざ加熱式タバコに切り替えるほどのメリットがあるとは考えにくいため、根本から改善するのであれば、潔く禁煙することを考えましょう。