風邪で体調が悪くなったときなどには、病院に通う方もいれば、ドラッグストアなどで市販薬を購入し、服用する方もいます。
また、風邪などの症状であれば、市販薬で完治させることが可能ですが、歯周病が市販薬で完治することはありません。
今回は、こちらの理由を中心に解説したいと思います。
市販薬で歯周病が完治しない理由4選
歯周病を発症すると、主に口内でさまざまな症状が出ます。
主な症状としては、歯茎の腫れや痛み、出血などが挙げられますが、これらの症状については、市販されている塗り薬などを使用することにより、ある程度和らぎます。
しかし、こちらは風邪を引いたときのように、根本から完治するというわけではありません。
このように、歯周病が市販薬で完治しない理由には、主に以下のことが挙げられます。
・歯石を落とせないから
・免疫力が関係しているから
・生活習慣が関係しているから
・解明されていないことが多いから
歯石を落とせないから
歯周病の原因は口内に存在する歯周病菌ですが、こちらは主にプラークや歯石の内部に存在します。
プラークはまだやわらかいため、ブラッシングをすれば除去できますが、歯石は石のように固まっている状態であるため、歯科クリニックでスケーラーを使用しなければ除去できません。
また、市販薬を使用しても、歯石を落とすことは不可能であり、このように歯周病菌の温床が口内に残り続ける限り、歯周病を完治させるのは難しいです。
免疫力が関係しているから
歯周病の主な原因は歯周病菌ですが、その方の持つ免疫力も大きく関係してきます。
近年の研究では、歯周病菌そのものよりも、身体が菌にどう反応するかの方が、大きな原因になると報告されているほどです。
つまり、菌に過剰に反応するような方は歯周病になりやすく、なおかつ悪化もしやすいということです。
もし、歯周病を治す薬があったとしても、こちらの体質の問題までカバーできないのであれば、すぐにまた歯周病になってしまいます。
生活習慣が関係しているから
歯周病は、世界一感染者数が多い感染症であると同時に、生活習慣病の一つでもあります。
そのため、生活習慣をきちんと改善しなければ、治療薬があったとしても、完治させるのは難しいです。
また、糖尿病など、他の生活習慣病が歯周病の発症につながるケースもあります。
解明されていないことが多いから
歯周病を発症する原因は、プラークや歯石に含まれる歯周病菌に感染することですが、実は歯周病菌については、まだ解明されていないことが多々あります。
代表的な歯周病菌には、P.g.菌やT.f.菌など10種類以上のものがありますが、すべての存在が明確になっているわけではないため、口内から歯周病菌をすべて排除する薬をつくるのは、現段階では不可能です。
また、人は毎日食事などにより、さまざまなものを口内に取り込みます。
このような状況が続く限り、口内の菌を根絶することは極めて困難です。
歯周病治療に使用されるジスロマックについて
歯科クリニックでは、歯周病治療の一環として、ジスロマックという抗生物質が用いられることがあります。
こちらは、細菌を原因とするさまざまな感染症に用いられる、マクロライド系抗生物質です。
歯周病治療では、酸素が少ない環境をこのみ、歯周ポケットや歯の隙間に入り込む歯周病菌に対し、強い効果を発揮します。
具体的には、細菌など数種類の微生物が集合、増殖してできるバイオフィルムという膜に浸透します。
しかし、ジスロマックの服用だけでは、歯周病を完治させるのは不可能です。
なぜなら、抗生物質では、バイオフィルムに浸透することはできても、破壊することはできないからです。
厳密に言うと、500錠の抗生物質を1日に3回服用すれば、バイオフィルムを破壊できるというデータがありますが、1日に1,500錠もの抗生物質を飲んだら、歯周病が治る前に命が失われます。
つまり、ジスロマックは、他の歯周病治療やセルフケアのサポートとして用いられるにすぎないということです。
歯周病を発症するリスクのある薬について
歯周病を完治させる市販薬は存在しませんが、逆に服用することにより、歯周病につながるリスクのある薬はあります。
具体的には、以下のような薬です。
・抗てんかん薬
・高血圧治療薬
・免疫抑制剤
抗てんかん薬や高血圧症治療薬には、歯茎が腫れて肥大化するという副作用があります。
このことから、歯周ポケットと同様のプラーク、歯石の温床部分が増え、歯周病のリスクが高まります。
また、免疫抑制剤にも同じような副作用が見られ、こちらは若い方や、服用する量が多い方ほど重症化する傾向にあります。
まとめ
ここまで、市販薬で歯周病が完治しない理由を中心に解説してきましたが、いかがでしたでしょうか?
市販薬で歯周病が治るようになれば、それは歯科業界にとって革命的な出来事ですし、患者さんにとっても非常に喜ばしいことです。
しかし、実際は発症の仕組みなどから、市販薬では完治せず、抗生物質などを用いても、それだけで症状を消失させることは難しいです。