歯と歯茎の間には、歯肉溝という小さな溝があります。
こちらは、特に問題のない健康な歯茎であっても存在するものですが、歯茎の問題が生じると、歯周ポケットと呼ばれる状態になります。
ここからは、歯周ポケットの特徴や種類、主な治療法などについて、詳しく解説したいと思います。
歯周ポケットの概要
健康な歯茎の場合、歯肉溝の深さは1~2mm程度しかありません。
しかし、磨き残しや間違ったブラッシングなどが原因で、歯肉溝にプラークが蓄積し、細菌の働きによって歯茎が炎症を起こすと、こちらの溝はどんどん深くなっていきます。
このように、炎症を起こして深くなった歯肉溝のことを歯周ポケットといいます。
一般的に、歯周ポケットの深さが3mmを超えると黄色信号、4mmを超えると歯周病を患っていると判断されます。
そのため、基本的には歯肉溝の深さを2mmまでに抑えておかなければいけません。
歯周ポケットの種類について
歯周病は、症状の進行度によって、歯肉炎と歯周炎の2種類に分けられます。
歯周病の初期段階である歯肉炎は、歯と歯茎周辺のプラークをブラッシングで除去すれば、正常な状態に戻りますが、歯周炎は歯の根元にまで炎症が進み、周辺の組織が破壊されます。
また、歯周ポケットにも、2つの種類があります。
1つは、歯肉炎で生じる仮性ポケットです。
歯肉炎の場合、歯茎が炎症によって大きく膨らんでいるため、歯周ポケットが深くなったような状態になります。
こちらは、実際垂直的に深くなっているわけではないため、仮性ポケットという名称が付けられています。
もう1つは、歯周炎で生じる真性ポケットです。
炎症反応が歯根膜や顎の骨にまで広がっている歯周炎の場合、歯と歯茎の境目の隙間が大きくなり、深い歯周ポケットが形成されます。
このような状態は、歯と歯茎の溝が垂直的に深くなっていることから、真性ポケットと呼ばれています。
加齢によって歯周ポケットが深くなる?
歯周ポケットが深くなってくる原因について、年齢のせいだと考える方もいますが、こちらは正確には間違っています。
加齢によって歯周ポケットが深くなるのではなく、あくまで歯周病の進行により、歯周ポケットは深くなります。
もちろん、年齢を重ねることで免疫力が低下するため、若い頃よりも歯周病にかかりやすくなるのは事実です。
しかし、10~20代などの若い方であっても、ブラッシングがおろそかであれば歯周病にかかり、歯周ポケットも深くなります。
一般的に、30~40代になると歯周病の罹患率は一気に高まるため、30代に差し掛かったら、特に異常がなくても歯科検診を受けてみることをおすすめします。
深くなった歯周ポケットは治るのか?
深くなった歯周ポケットであっても、場合によってはセルフケアである程度改善することができます。
特に、軽度の歯肉炎であれば、ブラッシングなどの日常的なケアを適切に行うことで、健康な歯茎を取り戻すことが可能です。
ただし、歯肉炎は目立った痛みや腫れがなく、症状に気付かないまま進行してしまう可能性があるため、注意が必要です。
また、症状が進行し、歯周ポケットの深さが4mm以上になってしまった場合は、日常的なケアとあわせて、歯科クリニックでの治療を受けなければいけません。
歯周ポケットの基本治療について
歯周ポケットに関する治療は、歯周基本治療と呼ばれるものから始まります。
まずは、染め出し液を使って磨き残しを確認した後、歯科医師や歯科衛生士によるブラッシング指導を受けます。
歯周ポケットの深さが3mm以下で、治療の必要がない場合は、ブラッシング指導を受け手終了することもあります。
また、歯周基本治療には、スケーリングも含まれます。
こちらは、スケーラーという専用の器具を使用し、歯茎の上や歯周ポケットの中のプラーク、歯石を除去する治療です。
フラップ手術について
深い歯周ポケットの歯石や病変部を除去し、歯と歯茎を支える周りの骨を健康な状態にする手術をフラップ手術といいます。
こちらは、歯周ポケットの深さが4mmを超える場合に行われるもので、明るい視野での歯石除去や病変部除去を行うことにより、問題がある部分の取り残しが発生しないというところがメリットです。
また、こちらの治療により、歯周ポケットを改善し、清掃しやすい環境をつくります。
ただし、フラップ手術を行うと、手術後に歯茎が下がり、しみやすくなるリスクがあります。
もっと言えば、歯周病の進行を抑制することはできますが、歯周病で溶けた歯を元に戻すことはできません。
骨が溶けてしまっている場合は、骨を再生するための歯周組織再生療法が行われることもあります。
まとめ
ここまで、歯周ポケットの特徴や種類、治療法などについて解説しましたが、いかがでしたでしょうか?
自身の歯肉溝に問題があるかどうか、自分自身で確認することはとても難しいです。
また、歯周病は気付いたら進行していたということも多いため、できるだけ早く異常に気付くためにも、3ヶ月に1回程度は歯科クリニックで定期検診を受けるようにしてください。