歯周病を発症すると、歯茎が弱って血が出やすくなったり、口内がネバネバになったりします。
重度にまで進行すると、歯が抜け落ちてしまう可能性もゼロではありません。
また、歯周病が悪化する過程において、味覚障害になってしまう場合もあります。
今回は、歯周病が原因で発症する味覚障害を中心に解説します。
味覚障害の概要
味覚障害は、味がわからない、味が薄く感じるといった味覚の低下・異常です。
味を感じる仕組みが、何らかの原因で働かなくなることによって起こります。
人が飲食物の味を感じるのは、舌の表面にある味蕾というセンサーが働くからです。
味蕾の中には、味を感じる細胞である味細胞があり、甘さや塩辛さなどの味を感知しています。
感知した味は味覚神経を介し、脳の神経に伝えられます。
また、嗅覚でとらえられた香りなどの情報も脳に伝えられます。
さらに食べ物の硬さなどは触覚、噛んだときの音は聴覚、見た目は視覚でとらえられます。
このように、味覚を含むさまざまな情報により、人は食べ物を美味しいと感じることができます。
歯周病によって生じる味覚障害の種類
歯周病によって生じることのある味覚障害は、異味覚と呼ばれるものです。
異味覚は、簡単にいうと“変な味がする”という種類の味覚障害です。
味覚障害の種類は、大きく味覚低下(無味覚)と異味覚に分けられます。
味覚低下は、4基本味覚と呼ばれる甘味・酸味・塩味・苦味を中心に、味を感じにくくなるというものです。
一方、異味覚は本来の味ではない異常な味を感じるものです。
歯周病によって生じる味覚障害は、“何も食べていないのに変な味がする”という異味覚の一種です。
また、何かを食べているとき、食べていないときにかかわらず、常に口内に渋みを感じることもあります。
歯周病によって味覚障害を発症する仕組み
歯周病によって味覚障害を発症するのは、口内の膿や乾燥などが主な原因です。
重度の歯周病を患うと、本人が気づかないうちに歯茎から血や膿が出ることがあります。
こちらは口内の苦味を生じさせたり、鉄の味がしたりすることにつながります。
また、歯周病を発症している方の中には、口内が著しく乾くドライマウスが原因の方もいます。
唾液は味物質を舌に運ぶ役割を担っているため、唾液が減少することにより、味を感じにくくなってしまいます。
ちなみに歯周病の方が口臭を気にするあまり、舌を磨きすぎてしまうことも、味覚障害の原因になり得ます。
過剰な舌磨きは味蕾を破壊し、味覚低下や異味覚を引き起こすことがあります。
味覚障害を放置しているとどうなる?
歯周病による味覚障害を放置していると、常に変な味がするため、食事を満足に楽しむことができません。
また、本来の味を感じられなくなるため、食品が傷んでいても気づかずに食べてしまう可能性があります。
傷んだ食品を食べることで、当然体調を崩す可能性が高まります。
さらに、味覚障害によっていつの間にか食事量が減り、栄養が足りなくなることも体調悪化の原因です。
もちろん、歯周病による味覚障害を放置するということは、歯周病自体を放置することにもつながります。
歯周病以外の味覚障害の原因について
口内のトラブルでいうと、磨き残しや虫歯、詰め物や被せ物などが原因で味覚障害を発症することもあります。
口内に磨き残しが蓄積すると、細菌が多く溜まって悪臭のもとになります。
特に歯と歯の間、ブリッジの連結部分などには汚れが溜まりやすく、悪臭や異常な味を感じるケースが多いです。
また虫歯が進行して歯に穴が開くと、その部分に汚れが溜まって腐敗臭を放ち、食事の際には異常な味となって現れることがあります。
さらに詰め物や被せ物が入っている歯から嫌なニオイや味がする場合は、虫歯などが原因で隙間ができ、そこに細菌が繁殖していることが考えられます。
歯周病による味覚障害の対処法
歯周病による味覚障害を改善するには、まず歯周病治療を受ける必要があります。
口内を清掃し、歯石も取り除くことにより、味蕾がうまく機能し始める可能性があります。
また、味覚障害は食生活の乱れでも生じます。
特に亜鉛やビタミンの不足が原因になるため、歯周病治療と並行して、これらの栄養素を採り入れた食事を意識しましょう。
ちなみに、それでもなかなか味覚障害が治らない場合は、新型コロナウイルスへの感染が疑われます。
新型コロナウイルスによる味覚障害は、感染時に現れる場合もあれば、治った後後遺症として現れる場合もあります。
異味覚とあわせて、味覚低下も現れているという方は、一度内科などのクリニックに相談しましょう。
まとめ
味覚障害は、日常生活に大きな支障をきたす症状です。
また、味覚障害が生じているということは、歯周病がかなり進行していることが予想されます。
進行した歯周病は、口内だけでなく全身への影響が危惧され、口臭などで周囲にも影響を与えている可能性があります。
悪化を防ぐためにも、ブラッシングなどのセルフケア、歯科クリニックでの定期的なプロケアを継続させましょう。