歯周病と聞くと、歯茎が赤く腫れたり、歯が抜け落ちたりといった症状を想像する方も多いかと思います。
もちろん、このような認識は間違っていないのですが、歯周病は口内だけでなく、時には全身の病気につながる可能性もあります。
ここからは、歯周病が引き起こす重大な病気について解説します。
歯周病が引き起こす重大な病気5選
歯周病は虫歯などと違い、自覚症状が少なく、気付いたら進行していたというケースも少なくありません。
また、重度の歯周病は、以下のような重大な病気につながることがあります。
・心臓病
・糖尿病
・肺炎
・骨粗しょう症
・早産
心臓病
心臓病は、日本人の死因の第2位に上げられる病気で、代表的なものに心筋梗塞が挙げられます。
こちらは、冠動脈が血栓によって詰まることで、心臓に血液が送られなくなり、心筋が壊死する病気で、治療が遅れると死に至ることもあります。
動脈硬化が進んだ中高年の方に多く見られ、高血圧や肥満、喫煙、運動不足などが原因とされていますが、近年は重度の歯周病にかかっていると、心筋梗塞のリスクが高まるという研究発表が報告されています。
死後に解剖した結果、心臓の血管内から本来あるはずのない歯周病菌が発見され、歯周病菌が原因の心筋梗塞が見つかったというケースもあります。
また、その原因としては、歯周病が進行することで、歯周病菌の一部が口腔内の傷から血液中に入り込むことにより、血管壁を傷付けたり、血小板に異常をきたし、冠動脈を詰まらせる血栓ができやすくなったりすることが挙げられます。
糖尿病
糖尿病は、血液中に含まれるブドウ糖(血糖)が増えてしまう病気です。
出血や膿を出しているような歯周ポケットからは、炎症に関連した化学物質が血管を経由し、体外に放出されています。
手のひらと同じサイズと考えられます。
言い換えると、歯周病が原因で、口内に手のひらサイズの出血や膿が出る可能性があるということになります。
このような状態の歯周ポケットから出て、血流に乗った炎症関連の化学物質は、体内で血糖値を下げるインスリンの効果を減少させます。
これにより、糖尿病が発症したり、進行したりする可能性は高くなります。
ちなみに、糖尿病の方は血液が高血糖になり、毛細血管が脆弱になります。
そのため、糖尿病でない方と比較した場合、毎日のケアを怠ると、歯肉炎や歯周病を引き起こしやすくなります。
つまり、糖尿病が歯周病を引き起こすケースもあるということです。
肺炎
肺炎の中でも、誤嚥性肺炎は歯周病と大きく関係しています。
誤嚥性肺炎とは、本来気管に入ってはいけないものが入り、そのために生じる肺炎のことをいいます。
食べ物や唾液には、口の中のさまざまな細菌が付着していますが、正しく食道側に入れば消化されるため、特に問題はありません。
しかし、気管側に入り、さらに肺にまで到達すると、そこで炎症を起こすことがあります。
こちらが誤嚥性肺炎であり、原因となる細菌の多くは歯周病菌という報告もあることから、歯周病は誤嚥性肺炎の大きなリスクと考えられています。
ちなみに、誤嚥性肺炎は命に関わる重大な病気であり、死亡する方も年々増加しています。
2021年には、死亡者が5万人近くに達し、日本人の死亡原因の第6位となっています。
骨粗しょう症
骨粗しょう症は、全身の骨強度が低下し、骨が脆くなって骨折しやすくなる病気で、日本では1,000万人以上の患者がいると言われています。
また、骨粗しょう症にかかっている方は、歯周病にかかりやすく、逆に歯周病が骨粗しょう症を引き起こしたり、悪化させたりすることもあります。
歯周病が進行することによって歯を失うと、噛む力が低下し、食べものの消化吸収力の低下を招きます。
その結果、ビタミンDやカルシウム不足、低栄養となり、骨粗しょう症を引き起こすもしくは悪化させます。
早産
早産は、正確に言うと病気ではありませんが、歯周病によって引き起こされる重大の症状の一つです。
歯周病が進行すると、歯茎に生じた炎症物質が毛細血管を通じて血液中に入り、歯周病菌とともに全身を巡ります。
また、炎症物質が子宮に到達すると、子宮が収縮する刺激を受けます。
これにより、出産予定日より前に子宮収縮を引き起こし、早産や低体重児出産になるとされています。
ちなみに、歯周病の妊婦さんが早産になるリスクは、歯周病ではない方の7.5倍にも上るとされています。
もっと言えば、妊婦さんの血液中の歯周病菌は、胎盤に付着し、細菌感染を引き起こします。
その結果、お腹の赤ちゃんが出産時の胎盤を通じ、歯周病菌に感染することも考えられます。
まとめ
ここまで、歯周病が引き起こす重大な病気とその症状、原因などについて解説しましたが、いかがでしたでしょうか?
歯周病が口内環境にのみ悪影響を与える病気だと思っている方は、この機会に認識を改めましょう。
実際は、命にかかわる病気を引き起こすこともある症状であるため、少しでも歯茎などの異変を感じたタイミングで、歯科クリニックを受診しなければいけません。