歯周病の直接的な原因はプラークですが、発症、予防のメカニズムには、さまざまな栄養素が複雑に関わっています。
また、歯周病と関係の深い成分の一つとしては、日頃耳にすることも多い“コラーゲン”が挙げられます。
今回は、歯周病とコラーゲンの関係性を中心に解説していきたいと思います。
コラーゲンとは?
コラーゲンは、身体を構成するタンパク質の一つです。
主に細胞の外に存在していて、細胞同士をつなぎ合わせる役割を果たしています。
また、コラーゲンは身体の至るところに存在していて、皮膚以外にも骨や軟骨、血管などに含まれています。
ちなみに、人間の身体の約20%はタンパク質でできていますが、そのタンパク質のおよそ30%がコラーゲンです。
例えば、体重が50kgの方であれば、体内には約3kgのコラーゲンが存在しているということになります。
歯周病とコラーゲンの関係性について
歯茎を構成している主な成分はコラーゲンです。
コラーゲンは、肌の健康を保つ上で欠かせない物質であり、こちらは口腔粘膜である歯茎も例外ではありません。
しかし、歯周病を発症すると、歯茎に炎症反応が起こり、コラーゲンもろとも破壊されてしまいます。
その結果、歯茎が弱くなり、歯周病菌への感染状況が悪化していきます。
つまり、歯周病を発症することで、歯茎のコラーゲンの量が減少し、さらに症状が悪化するという悪循環を招くということです。
コラーゲンを多く含む食べ物について
歯周病を予防するにあたって、重要な役割を果たすコラーゲンは、主に以下のような食品に多く含まれています。
・豚肉
・湯葉
・脱脂粉乳
・焼き麩
・高野豆腐
・ゼラチン など
これらの食品を積極的に日々の食事に採り入れることにより、歯周病予防の一環となります。
コラーゲンだけを摂取するのはNG
食品からコラーゲンを摂取することは歯周病予防になりますが、実はコラーゲンは、そのものを摂取しても身体に吸収されません。
摂取したコラーゲンは消化器で分解され、諸条件が整って初めて歯茎などの歯周組織で生合成されます。
また、このとき必要不可欠な栄養素としては、ビタミンCが挙げられます。
歯周病予防にビタミンCが必要不可欠な理由
歯周病を発症した歯茎は、コラーゲン線維が破壊された状態です。
ビタミンCには、こちらのコラーゲンの合成促進効果があります。
こちらは、壊れたコラーゲン線維の再生を促し、歯茎を健康に保つ効果であり、歯周病によって傷ついた歯茎を治癒してくれます。
また、ビタミンCは、歯肉や皮膚に触れることにより、その直下の組織のコラーゲンの生成が活発になるという効果もあります。
そのため、コラーゲンとビタミンCをセットで摂取することにより、すでに歯周病を発症している方は悪化の防止、発症前の方は発症の防止につながります。
ビタミンCを多く含む食べ物について
特にビタミンCを多く含む食品は、赤パプリカや果肉が黄色いキウイフルーツです。
パプリカを1/2個使用した料理や、黄色のキウイフルーツは、1個分で成人の1日の推奨量を満たすことができ、こちらはコラーゲンの生成に大きく貢献します。
その他、以下のような食品にも豊富に含まれています。
・ブロッコリー
・ミニトマト
・サツマイモ
・ジャガイモ
・キャベツ
・イチゴ
・レモン
・みかん など
ただし、食品中に含まれるビタミンCは、水に溶けやすい性質があるため、茹でると煮汁に溶け出して損失します。
また、熱に弱いことから、加熱すると含有量が減少することが懸念されるため、注意が必要です。
コラーゲンやビタミンC以外の重要な栄養素
ホモシステインは、必須アミノ酸の一つであるメチオニンの代謝における中間生成物で、動脈硬化の原因の一つとして注目されています。
また、近年、東京慈恵会医科大学の教授による研究において、ホモシステインは良好な骨に必要なコラーゲンの網目構造形成を阻害し、骨の質を低下させることがわかりました。
そのため、歯茎の状態を良好にし、歯周病を予防するためには、血中のホモシステイン値を低下させる栄養素を摂取することが大切です。
具体的には、ビタミンB6やビタミンB12、葉酸といった栄養素の適切な量の摂取が求められます。
歯周病になった歯の治療は難しい
コラーゲンの不足などにより、歯周病になった場合、ブラッシングや栄養素の摂取などにより、ある程度症状を改善させることはできますが、根本的に治すのは難しいです。
一度発症した歯周病に対するアプローチは、あくまで進行を食い止め、炎症を抑えることであるため、日頃からコラーゲンやビタミンなどの栄養素を積極的に摂取することが大切です。
まとめ
ここまで、歯周病とコラーゲンの関係性を中心に解説してきましたが、いかがでしたでしょうか?
歯茎の多くはコラーゲンで生成されているため、歯周病によって線維が破壊されると、口内の健康を維持することができません。
また、コラーゲンを食品から摂取する際は、ビタミンCをはじめとする栄養素もあわせて摂取し、摂取効率を挙げられるように工夫しなければいけません。