歯周病は、歯と歯茎の間に繁殖する細菌に感染し、歯の周りに炎症が起こる病気です。
そのため、「歯周病は口の病気」というイメージを持っている方も多いかと思いますが、実際はさまざまな全身疾患とも関係があります。
ここからは、歯周病とメタボリックシンドロームの関係性について解説します。
メタボリックシンドロームとは?
メタボリックシンドロームとは、内蔵肥満に高血圧、高血糖、脂質代謝異常が組み合わさることにより、心臓病や脳卒中などになりやすくなる病気のことをいいます。
お腹が出ている方に対し、メタボ体形などと例えることがありますが、実際は単に腹囲が大きいだけでは、メタボリックシンドロームには当てはまりません。
具体的には、脂肪型肥満を必須項目として、脂質異常、高血圧、高血糖のうち、2つ以上が以下の基準を超える状態がメタボリックシンドロームに該当します。
・腹囲:男性85cm以上、女性90cm以上
・脂質異常:中性脂肪150mg/dL以上、HDLコレステロール40mg/dL未満のいずれかもしくは両方が該当する場合
・高血圧:最高血圧130mmHg以上、最低血圧85mmHg以上のいずれかもしくは両方が該当する場合
・高血圧:空腹時血糖値110mg/dL以上
ちなみに、中性脂肪値が高ければ高いほど、肥満症や脂肪肝になりやすいことを示しています。
また、HDLコレステロールは、血管壁に付着した善玉コレステロールであるLDLコレステロールを積極的に抜き取り、排除する働きがあり、血糖値が高ければ高いほど、糖代謝に関わるインスリンの働きが弱くなります。
歯周病とメタボリックシンドロームの関係は?
近年、歯周病とメタボリックシンドロームは関わりがあると言われています。
身体に脂肪が溜まりすぎると、さまざまなサイトカイン(細胞から分泌されるタンパク質)が分泌され、動脈硬化を促進させます。
こちらの脂肪細胞から出てくるサイトカインと同じ物質が歯周病でも出てくるため、歯周病がメタボ関連の病気である糖尿病を悪化させると考えられています。
また、歯周病が動脈硬化の誘因になるとも言われていて、実際にメタボリックシンドロームの判定基準に当てはまる数が多いほど、歯周病のリスクが高まるという研究結果もあります。
よく噛めなくなることもメタボリックシンドロームの原因
歯周病を発症し、歯を失うと、咀嚼能力が低下します。
そうすると、食べ物をよく噛まずに飲み込んでしまうことから、満腹中枢が刺激されず、必要以上に摂食することになります。
つまり、歯周病によってよく噛めなくなることが、メタボリックシンドロームにつながる可能性があるということです。
逆に、きちんと咀嚼ができる方であれば、食べ物をよく噛むことで満腹中枢が刺激されるため、必要以上に食べてしまうというケースは多くありません。
メタボリックドミノについて
メタボリックシンドロームが進行すると、ドミノを倒すように次々と別の疾患が見られるようになります。
こちらはメタボリックドミノと呼ばれるもので、具体的にはメタボの進行に伴い、高血圧や糖代謝異常、動脈硬化や虚血性疾患、脳血管障害などが起こり、最終的には心不全や脳卒中、腎不全など、重大な病気が引き起こされるようになります。
これらの病気は、一度に起こるものではありません。
生活をしていく中で、時間を追って次々と発症していくため、一度メタボリックドミノが起こってしまうと、病気の連鎖を途中でストップさせることは難しいです。
歯周病は、こちらのドミノの最上流に位置していると言われています。
つまり、メタボリックドミノの始まりが歯周病の発症だということです。
また、一切自覚症状のない歯周病であっても、それがメタボリックドミノの最初の一枚になる可能性があります。
歯周病とメタボリックシンドロームの改善方法
歯周病とメタボリックシンドロームは、相互に関係のある症状であり、いずれも早急に改善させなければいけません。
これらの症状を改善するためには、まず生活習慣を見直す必要があります。
具体的には、糖分や脂質、炭水化物を控え、食べすぎないように注意することが大切です。
その他、タバコを控え、適度な運動や十分な睡眠を意識し、なるべく日常生活でのストレスを溜めないようにします。
また、セルフケアと歯科クリニックのケアにより、口内環境を整えることも重要です。
歯磨きについては、食後30分程度には必ず行い、歯ブラシの他にも歯間ブラシやデンタルフロス、マウスウォッシュを併用します。
もちろん、プラークや歯石はセルフケアだけでは取り切れないため、3ヶ月に一度は歯科クリニックでクリーニングを受けるようにしましょう。
まとめ
ここまで、歯周病とメタボリックシンドロームの関係性について解説してきましたが、いかがでしたでしょうか?
歯周病がメタボリックシンドロームを引き起こすこともあれば、メタボリックシンドロームが歯周病を悪化させることもあります。
また、これらはいずれもさまざまな全身疾患を引き起こすため、口内環境の維持、健康的な体形の維持はどちらも意識しなければいけません。