歯周病は、プラークの中の細菌が原因であることが知られていますが、こちらの疾患を進行させる原因としては、他にも多くの要素が関わっています。
こちらはリスクファクター(危険因子)と呼ばれるもので、その一つに噛み合わせの問題が挙げられます。
今回は、歯周病と噛み合わせの関係について詳しく解説したいと思います。
特定の歯に力が集中すると歯周病が悪化する
噛み合わせが悪い方、特に歯並びが目に見えてガタガタになっている方は、噛み合わせのバランスがまったく取れていないため、特定の歯ばかりに力が集中します。
また、歯を垂直方向の力には強いですが、水平方向の力には弱いです。
そのため、歯並びがガタガタだと、奥歯で水平方向、つまり横揺れの力が歯に加わる機会が多くなります。
そうすると、その歯の周りの骨だけが特異的になくなってしまうことがあります。
こちらは、歯周病の症状を悪化させる原因の一つです。
噛み合わせが悪いとブラッシングがしにくくなる
噛み合わせが悪い方は、歯並びも悪いケースが多いです。
歯並びがキレイな方は、ブラッシングを行いやすく、プラークなどの汚れをキレイに取り除くことができますが、歯と歯が重なり合っているような方は、そういうわけにはいきません。
デコボコした歯の部分も、丁寧に磨けば問題ありませんが、ブラッシングが行き届かない場合は、汚れが残り、細菌の温床となってしまいます。
その結果、歯周病や虫歯などの疾患を引き起こします。
歯ぎしりによって噛み合わせの悪化、歯周病につながることも
主に就寝時、無意識のうちに歯ぎしりを行っているという方がいます。
こちらは、歯周病と同じで自覚症状が少ないため、なかなか気付くことができません。
また、奥歯の被せ物による歯周病の症状(歯槽膿漏)は、前歯の犬歯に関係していることが多くあります。
犬歯は糸切り歯とも呼ばれるもので、こちらは噛み合わせの上で、奥歯を守る重要な役割を担っています。
しかし、歯ぎしりで犬歯が摩耗すると、前歯と奥歯のバランスが崩れ、結果的に奥歯が歯の被せ物による歯槽膿漏の症状になることがあります。
悪い噛み合わせは歯と歯茎の隙間を広げる
歯周病を発症すると、歯を支えている歯茎やその下にある骨が細菌による炎症で溶け始め、次第に擦り減ります。
これだけでもかなりのダメージですが、こちらに噛み合わせによる圧力が加わると、弱っている歯茎や骨はさらに揺さぶられることになります。
こうなると、歯がどんどんグラグラになってしまい、歯と歯茎の隙間が広がり、そこに多くの細菌が入り込み、歯周病を悪化させます。
以前より歯と歯茎の間にものが詰まりやすくなったと感じる方は、歯の動揺も見られる可能性が高いです。
口呼吸が歯周病を悪化させることも
噛み合わせが悪い方は、上下の歯がうまく噛み合わなかったり、噛み合わせが逆になったりしていることがあります。
このような方は口をうまく閉じられないことから、口呼吸をする機会が増加します。
また、日常的に口呼吸をしている方は、唾液の分泌量が減少しやすく、口内で細菌が繁殖しやすい環境になります。
こちらは、歯周病の悪化につながります。
ちなみに、口呼吸を続けていることで、噛み合わせが悪化するという逆のパターンもあります。
口呼吸の方は、口を開けている時間が長くなることで、口周りの筋肉が衰え、前歯が舌側に引き寄せられる力が弱くなり、次第に出っ歯に近づいていくことがあります。
歯周病と噛み合わせの治療について
歯周病の主な治療としては、ブラッシング指導や歯石の除去などにより、炎症をなくすことが挙げられます。
このとき、噛み合わせの問題が原因となり、痛みや不快感、歯の大きな動揺などが生じている場合は、噛み合わせの調整が必要な場合もあります。
また、噛み合わせの調整を行っても、歯周病による歯の動揺が治まらない場合は、動揺を抑えるために周りの歯と連結することがあります。
具体的には、動揺により、食事に支障をきたしている、歯周病の治療を行うことができないといった場合に、ワイヤーやレジンなどの材料を使用し、歯を連結します。
ちなみに、噛み合わせが大きく崩れてしまっている場合は、まず患者さんにおける適切な噛み合わせがどこにあるのかを分析し、探し出さなければいけません。
このようなケースでは、仮歯を装着し、調整しながら適切な噛み合わせを探す治療も実施されます。
しっかりと歯に固定する補綴物とは違い、仮歯は調整がしやすいため、患者さんの感覚や希望を反映しやすく、その仮歯に基づき、最終的には理想的な補綴物、噛み合わせに近づけることができます。
まとめ
ここまで、歯周病と噛み合わせの関係について詳しく解説してきましたが、いかがでしたでしょうか?
しっかりブラッシングなどのケアをしていても、噛み合わせが悪いままだと、どうしても歯周病のリスクは高くなってしまいます。
そのため、噛み合わせや歯並びが良くないという自覚がある方は、歯周病を発症する前に、そちらを改善する治療を受けることも検討してください。