歯周病は全世界に感染者が存在する病気です。
日本人でも、30代以上の3人に2人が発症していると言われています。
発症していない方が珍しいくらいです。
また歯周病は、バージャー病というおそろしい病気と関係があります。
今回は、バージャー病の概要や歯周病との関係について詳しく解説します。
バージャー病の概要
バージャー病は、炎症が原因で血管が閉塞する病気です。
閉塞性血栓性血管炎とも呼ばれます。
病名はこちらの病気の詳しい報告を初めて行った医師の名前に由来します。
30~40代前後の方に多く見られ、症状としては手足の末端の血管が塞がります。
これによって血液が行き渡らくなります。
またこれが原因で、手足の先端に些細な傷などができただけで強い痛みを伴います。
潰瘍の他に壊死を伴うこともあり、場合によっては手足を切断しなければいけません。
潰瘍や壊死は突然できるわけではなく、冷感やしびれなどの初期症状から始まります。
ちなみにこれらの症状は、膠原病とはじめとする他の病気でも見られます。
バージャー病特有のものではないため、バージャー病だと気づきにくいことが多いです。
バージャー病と歯周病の関係性
バージャー病は手足の動脈が閉塞する病気です。
こちらは血管内の血栓が原因ですが、血栓の形成には歯周病が関係しています。
歯周病は、歯周病菌の感染によって発症する感染症です。
主な症状としては歯茎の炎症が挙げられます。
また、歯周病菌は歯茎の表面から血管の中に侵入することがあります。
血流に乗って手や足の動脈にたどり着くと、生きたまま血小板や単球に取り込まれます。
これにより血小板は凝集し、血管の中で凝集塊をつくって血管を閉塞させてしまいます。
つまり歯周病の悪化を放置した結果、バージャー病を招く可能性があるということです。
歯周病は自覚症状が少ない病気です。
このことから知らず知らずのうちに悪化し、バージャー病を引き起こすこともあります。
歯周病とバージャー病に関する研究
東京医科歯科大学の教授は、歯周病とバージャー病に関する研究を行いました。
その結果、これらの病気に関する関連性が明確になっています。
こちらの研究では、バージャー病患者の口内と患部の血管を調査しています。
その結果、すべてのバージャー病患者は歯周病と診断されました。
歯周病の程度はいずれも中程度から重症と進行しています。
また患部の血管試料のほとんどからも、歯周病菌が検出されました。
これらの発見は、今まで原因不明だったバージャー病と歯周病の関連性を示しています。
さらにバージャー病の予防法や治療法の開発のための大きな手掛かりにもなっています。
バージャー病の治療法
バージャー病は、喫煙との強い関連性も指摘されています。
摂取するタバコの本数が多いほど、発症のリスクは高まります。
そのためバージャー病の治療は、まずは禁煙がベースになります。
禁煙を実行した上で、血液の循環を良くするための治療を行います。
例えば抗血小板薬や血流改善薬、抗凝固薬といった薬が投与されます。
虚血症状を改善するために、血行再建手術が行われることもあります。
さらに重篤な場合には、交換神経節ブロックや交換神経節切除手術も選択されます。
ちなみに歯科クリニックでの定期検診も、バージャー病の治療法の一つです。
定期検診によって口内を清潔に保つなど、歯周病治療も兼ねたケアが有効です。
バージャー病のセルフケア
バージャー病のセルフケアとしては、前述の通り禁煙が挙げられます。
タバコを控えることにより、重篤化する可能性は軽減されます。
またバージャー病のセルフケアとしては、手足を清潔に保つことも挙げられます。
その他肌を保温したり、運動や入浴による血流改善を行ったりするのがおすすめです。
ちなみに禁煙にはバージャー病の改善だけでなく、歯周病予防の効果もあります。
禁煙することにより、歯周組織は数週間で本来備わっていた免疫応答を回復します。
見た目のゴツゴツした感じも減り、みずみずしいピンク色に変わっていきます。
歯周病治療の効果についても、禁煙によって飛躍的に高まります。
歯周病は他の全身疾患のリスクもある
歯周病はバージャー病だけでなく、他の全身疾患につながるリスクもあります。
よく知られているのは糖尿病や動脈硬化、誤嚥性肺炎や骨粗しょう症などの疾患です。
また以外な症状としては、認知症との関連性も深いです。
アルツハイマー型認知症は、脳にアミロイドβという物質が蓄積するのが主な原因です。
近年の研究により、歯周病菌がアミロイドβの蓄積を促進させることがわかりました。
まとめ
ここまで、歯周病と関係のあるバージャー病について詳しく解説してきました。
バージャー病の原因については、すべてが歯周病であるとは限りません。
しかしこれらの疾患の関連性は深く、実際それを裏付ける研究結果も出ています。
また歯周病は、バージャー病以外にもさまざまな病気を引き起こします。
日頃から丁寧なブラッシングや定期検診などにより、歯周病ケアを徹底しましょう。