歯周病は、痛みがほとんど発生しない病気であり、歯茎が赤く腫れるのが一般的です。
また、ブラッシングの際に出血したり、口臭が強くなったりといった症状も見られますが、末期の場合は歯が脱落することもあります。
今回は、歯周病によって歯が抜け落ちた場合の対処法を中心に解説します。
歯周病によって歯が脱落する仕組み
歯周病は、進行する過程で歯茎や顎の骨が溶けていきます。
その結果、歯を支えきれなくなり、自然と脱落するという現象が起こります。
また、歯周病は、比較的軽度とされる歯肉炎、重度とされる歯周炎の2つに大きく分けられます。
歯肉炎を発症してから、歯周炎になって歯が抜け落ちるまでには、通常15~30年ほどかかるとされていて、このような歯周炎は慢性歯周炎と呼ばれます。
ただし、歯周炎には2~10年ほどで急速に進行する侵襲性歯周炎というものも存在し、こちらは当然歯が脱落するまでの期間も短くなるため、注意しなければいけません。
歯周病で脱落した後の口内環境の変化
歯周病が末期まで進行し、歯が抜け落ちた後は、歯茎の腫れや出血など、歯周病の症状が徐々に改善されていきます。
なぜなら、歯周病菌の住処となるプラークや歯石が溜まらなくなるからです。
歯周病は、主に歯茎に症状が見られる病気ではありますが、歯が存在しなければ、そもそも発症することがありません。
そのため、歯が脱落すれば、自然と治癒に向かっていきます。
ただし、症状が治まるからといって、歯が抜けた状態をそのままにしておくのは良くありません。
歯周病で歯が脱落したまま放置するデメリット
歯周病で歯を失った状態を放置していると、歯並びや噛み合わせが崩れる可能性があります。
歯というものは、すべての歯が揃った状態で初めてバランスを保つことができます。
そのため、抜けた部分を空白のままにしていると、そのスペースに他の歯が寄ってきます。
抜けた歯と噛み合う上下いずれかの歯、抜けた歯の両隣の歯が傾いたり伸びたりして、空いた部分を埋めようとするため、1本歯を失っただけでも、歯並びや噛み合わせは大きく乱れるおそれがあります。
また、歯を失うと、噛める部分でのみ噛もうとするため、特定の歯に大きな負担がかかります。
このような状態が長く続くと、健康な歯の破折や虫歯のリスクが高まります。
ちなみに、噛み合わせの悪化により、顎関節症を発症してしまうことも考えられます。
歯周病で脱落した歯を補う方法
歯周病で歯が抜け落ちた場合、もしくは抜歯を行った場合は、そのままの状態で放置せず、歯を補う治療を受けなければいけません。
このとき用いられる主な治療法としては、入れ歯やブリッジ、インプラントなどが挙げられます。
それぞれのメリットやデメリットを見てみましょう。
入れ歯
部分入れ歯は、クラスプと呼ばれる金属のバネを、歯が失われた部分の両隣にかけて固定します。
保険適用の部分入れ歯の場合、治療期間は比較的短期間で済みますし、手術も不要ですが、食べカスが挟まりやすく、手入れにも手間がかかります。
ブリッジ
ブリッジは、両隣の歯を支えにして固定するタイプの入れ歯です。
失われた部分の義歯と、両隣の歯に被せる義歯を1つにした形状になっています。
固定されているため、違和感はそこまでありませんし、材質によっては天然歯と同じような美しさにできますが、こちらを使用するには、両隣の健康な歯を削る必要があります。
インプラント
インプラントは、顎の骨に穴を開け、人工歯根を埋め込み、その上に人工歯を被せる治療です。
歯周病で歯を失った方でも、自身の歯と同じような感覚で噛むことができたり、見た目がとても美しかったりすることがメリットです。
また、周囲の歯に一切負担をかけずに治療できます。
ただし、こちらは外科手術が必要であり、費用も高額な上、骨の状態によっては対応できないことがあります。
歯周病で歯が脱落した後、歯を補う場合の注意点
歯周病で歯が脱落してしまっても、失った歯を補う治療を受ければ、咀嚼や発音の機能は回復させることができます。
ただし、前述したような治療を受ける場合は、事前に口内環境を改善しておく必要があります。
先ほど、歯が脱落した後は、歯周病が改善に向かっていくという話をしましたが、こちらはあくまで歯が抜け落ちた部分にのみ言えることです。
そのため、全体的な口内環境の改善をしなければ、入れ歯やブリッジ、インプラントなどの治療を受けた後、またすぐに歯がダメになってしまうおそれがあります。
ちなみに、歯が脱落するほど歯周病が進行している場合、スケーリングやルートプレーニングだけでは改善せず、外科手術が必要になる可能性もあります。
まとめ
ここまで、歯周病によって歯が脱落した場合の対処法を中心に解説しましたが、いかがでしたでしょうか?
歯周病によって歯が抜け落ちても、きちんと口内環境を改善させれば、その後の治療で失った歯を補うことは可能です。
しかし、もっとも大事なのは、歯を失ってからの対処法を考えることではなく、歯周病が悪化しないよう、日頃からセルフケア、プロフェッショナルケアを徹底することです。