歯周病は、その症状が広く知られています。
そのため、歯茎が赤く腫れていたり、出血があったりする場合、「歯周病ではないか」と考える方も多いです。
しかし、世の中には歯周病に似た症状が見られる疾患もあるため、必ずしも歯周病とは限りません。
今回は、こちらの疾患の詳細を中心に解説したいと思います。
歯周病に似た症状が見られる疾患4選
以下の疾患は、歯周病と似たような症状が見られます。
・根尖性周囲炎
・歯冠周囲炎(智歯周囲炎)
・歯肉増殖症
・エプーリス
根尖性周囲炎
根尖性周囲炎は、歯髄炎や歯根膜炎が進行し、歯根の周りの歯槽骨に炎症が波及して起こる疾患です。
普段はその歯を叩いたり、その歯で噛んだりするときに痛んだり、違和感があったりする程度ですが、急性化すると、歯根の先端に相当する付近の歯茎が腫れ、ズキズキと痛むことがあります。
また、根尖性周囲炎にはさまざまな原因があります。
例えば、虫歯が大きくなり、神経が死んでしまうことや、深い虫歯の治療を行ったことなどが主な原因であり、その他には外傷による神経の切断、歯の破折なども挙げられます。
ちなみに、根尖性周囲炎によって膿が溜まっている場合は、歯茎を切開して膿を出し、薬で炎症を抑えてから歯根の中の治療を行い、原因を取り除きます。
程度が軽ければ、こちらの治療で改善します。
歯冠周囲炎(智歯周囲炎)
歯冠周囲炎は、名前の通り歯冠(エナメル質の部分)の一部が歯茎に覆われていることにより、歯冠と歯茎の間にプラークが溜まりやすくなり、歯茎が感染して炎症を起こす疾患です。
特に、親知らずでは、生え方によって歯茎が被った状態になりやすく、炎症が喉の方に波及すると、飲み込むときに痛んだり、口が開きにくくなってしまったりします。
このように、親知らずに発症するものについては、智歯周囲炎と呼ばれます。
また、こちらの症状を放置すると、稀に炎症が首の方にまで拡大することもあります。
さらに、細菌が首のリンパを超えて全身に行き渡ると、敗血症と呼ばれる命を脅かす病気にかかることも考えられます。
こちらの治療については、炎症を起こしている歯茎が膿を持っている場合、切開して膿を出しますが、通常は薬で炎症を抑えた上で、被っている歯茎を切除したり、抜歯をしたりします。
歯肉増殖症
歯肉増殖症は、広範囲にわたって歯茎が腫れ、増殖する疾患です。
歯肉炎や歯周炎による全体的な歯茎の腫脹以外に、内分泌異常が原因のもの、てんかんや高血圧の治療薬、免疫抑制剤などの薬剤を長期服用することによるものなどがあります。
中には原因不明のものもありますが、基本的には歯石などによる慢性的な刺激が加わっていると起こりやすいとされています。
また、症状がひどくなると、歯茎が歯のほとんどを覆ってしまい、呼吸が困難になる障害を起こすことも考えられます。
ちなみに、歯肉増殖症を患うと、歯との間にプラークが付着しやすく、除去もしにくくなるため、とにかく丁寧なブラッシングによる口内清掃が必要になります。
エプーリス
エプーリスとは、歯肉腫とも呼ばれるもので、歯茎の創傷治癒異常の一種をいいます。
過剰の肉芽組織を形成する有茎性の歯肉腫瘤であり、簡単にいうと歯茎に目立つこぶのようなものが形成されます。
歯根膜と連続していることも多く、小豆大から大きいものでは直径3~4cmを超えるものもあります。
表面は、正常な粘膜色から赤色まで、さまざまな色調が見られます。
エプーリスを発症する原因は、歯茎への慢性的な刺激や、それによる炎症で組織が反応することです。
虫歯治療などで使用する、合っていない詰め物の金属、歯石などにより、少しずつ形成されていきます。
また、妊娠中の女性には、こちらのエプーリスが見られるケースが多いです。
こちらは、女性ホルモンなどの内分泌異常が原因と考えられていて、男女の割合で見ても、女性は男性の2倍ほどエプーリスを発症しやすくなっています。
治療については、腫瘤の切除を行いますが、歯根膜を含めた切除や、同時に抜歯を行うこともあります。
歯周病から別の病気を発症することも
歯周病に感染している方が、そこから別の病気を合併症として発症するというケースもあります。
例えば、歯周病で痰や咳が出ている場合は、歯性上顎洞炎や誤嚥性肺炎の発症が疑われます。
歯性上顎洞炎は、歯周病菌が鼻の左右に広がる上顎洞に入り込み、炎症を起こす病気です。
症状は蓄膿症に似ていて、鼻が詰まったり、鼻水が喉の方に流れたりすることで、痰や咳につながります。
また、誤嚥性肺炎は、唾液に含まれる歯周病菌を誤って飲み込んでしまった場合に発症するもので、痰や咳の他、発熱を伴うこともあります。
まとめ
ここまで、歯周病に似た症状が見られる疾患を中心に解説してきましたが、いかがでしたでしょうか?
歯周病は、放置すると口内環境が破壊される恐ろしい病気ですが、同じような症状が見られる他の疾患も、早急に歯科クリニックで治療を受けなければいけません。
つまり、歯茎を中心とした違和感がある方は、できる限り早く通院しなければいけないということです。