歯周病は口内だけにとどまらず、さまざまな全身疾患とも関連性を持っています。
有名なところでいうと、糖尿病や心臓病、脳梗塞などのリスクを高めると言われていて、その他にも数々の病気と密接に関わっています。
ここからは、歯周病に関連する意外な病気とそのメカニズムについて解説したいと思います。
歯周病に関連する意外な病気4選
歯周病と全身疾患の関わり方としては、歯周病が他の病気のリスクを高めるケースと、他の疾患が歯周病につながるケースがあります。
また、あまり知られていませんが、歯周病は以下のような病気とも関係性があります。
・ダウン症
・バージャー病
・関節リウマチ
・胃潰瘍
ダウン症
通常、ヒトの染色体は、1番目から22番目の染色体まではペアになっていますが、ダウン症(ダウン症候群)は21番目の染色体が1本多く3本あり、こちらが原因の疾患です。
精子や卵子が作られるときに染色体の不分離が起こることが原因と考えられていますが、不分離がどうして生じるのかはまだ明らかにはされていません。
人種関係なく、すべての人に起こりうる現象であると言われています。
また、ダウン症の出生頻度は1,000人に約1人の割合です。
日本では、1年間に約1,100人生まれていると言われていて、心臓や呼吸器、目、耳、鼻など合併症を持つことが多い傾向にあり、ダウン症の患者さんの発達は、運動、知能、言葉、社会性など全般的にゆっくりです。
そして、ダウン症の患者さんは、発達の遅れにより口の中のケアが充分にできなかったり、歯の根が短い、歯が小さいなど歯の形の異常があったり、免疫力が低く歯周病菌に感染しやすかったりと、歯周病のリスク要因を多く持っています。
歯周病になりやすく、症状の進行が速いのも特徴です。
バージャー病
バージャー病とは、手足の動脈の壁に炎症が生じ、血管が細くなる、あるいは血の塊である血栓ができることで、血管が詰まってしまう病気のことをいいます。
血栓で血管がふさがってしまうと、手足や指先の組織に血液が十分に流れ込まなくなる虚血症状が起き、さまざまな問題を引き起こします。
根本的な原因はわかっていませんが、患者のうち9割は男性で、その大半が30~40代です。
近年では女性患者にも増加傾向が見られ、国の指定難病に分類されています。
また、バージャー病の患者さんは、歯周病と深い関係があります。
2005年、東京医科歯科大学の研究グループにより、歯周病がバージャー病に関与していることが、世界で初めて明らかにされました。
こちらの調査では、バージャー病患者の全てが中等度から重症の歯周病にかかっていたことがわかり、病気にかかっている手足の血管からは歯周病菌が見つかりました。
一方、病気にかかっていない手足の血管からは、歯周病菌は全く見つかりませんでした。
歯周病菌が心臓の血管を詰まらせて心臓発作を引き起こすように、手足の血管をつまらせてバージャー病を引き起こすと考えられています。
関節リウマチ
関節リウマチとは、複数の関節に炎症が起き、痛みや腫れ、こわばりが生じる病気のことをいいます。
自己免疫性疾患(免疫を担当する細胞が正常な細胞や組織を抗原とみなして攻撃する疾患)の一つです。
関節中の骨膜に炎症が持続して関節炎を起こし、男女比は1対4で女性に多く見られるのが特徴で、発症は30〜50歳代がもっとも多いです。
慢性関節リウマチの患者さんの膝や関節の中にある滑液という液からは、ACPAという抗体が検出されたのですが、通常こちらは自分の身体にないものです。
そのため、それを攻撃してボロボロになったのがリウマチだということが分かってきています。
また、なぜこのような抗体ができたのかを調べてみると、さまざまな菌がタンパク分解酵素を出したことが原因だということが分かってきました。
その原因となる菌の中には、歯周病の原因であるPg菌(ポルフィロモナス・ジンジバリス)が存在します。
実際、慢性関節リウマチの患者さんの滑液の中にPg菌がいたことも明らかになっています。
胃潰瘍
胃潰瘍とは、胃酸によって胃の壁が傷つけられ、痛みや出血を起こす病気のことをいいます。
具体的には、胃から分泌される胃酸と、胃酸から胃壁を守る粘液の分泌のバランスが崩れ、胃酸によって胃壁が傷つき、痛みを感じたり、出血を起こしたりする病気で、胃潰瘍と十二指腸潰瘍を総称して消化性潰瘍とも呼びます。
また、歯周病菌は胃潰瘍、胃がんの原因と言われているピロリ菌と共通する抗原を持っていることが知られています。
そのため、歯周病菌が原因で腹痛や下痢、嘔吐、胃潰瘍、胃がんなどを引き起こす可能性があると言われています。
まとめ
ここまで、歯周病に関する意外な病気と、関わり方のメカニズムについて解説しましたが、いかがでしたでしょうか?
歯周病は、全世界でもっとも蔓延している病気として、ギネス世界記録にも認定されています。
それでいて、これだけ多くの疾患と関わりがあるため、予防することや、発症した状態を放置しないことが、いかに大切かがわかります。