歯周病を発症している方は、まず生活習慣の改善やプラークコントロールにより、少しずつ口内状況を良くしていかなければいけません。
また、歯科クリニックでのクリーニングや、場合によっては歯周外科治療も必要になります。
今回は、歯周外科治療の一つである“フラップ手術”について解説したいと思います。
フラップ手術の概要
フラップ手術とは、歯茎を切開し、歯周ポケットの奥にある歯石やプラークを除去するための手術のことをいいます。
歯周ポケット搔爬(そうは)術とも呼ばれます。
歯周病が進行することで歯周ポケットが深くなり、通常の歯石除去(スケーリング)では深い部分までキレイにすることが難しくなります。
また、歯周ポケットに歯石などが残ると、歯茎の炎症が治まらず、歯と歯茎がくっつきません。
このような状況では、歯周外科治療であるフラップ手術が有効になります。
フラップ手術が適応される条件
フラップ手術は、以下の4つの要件を満たす患者さんに適応されます。
・歯周基本治療後も深い歯周ポケットが残っている
・口内の清掃状態が良い
・全身状態が良い
・喫煙していない
歯周病治療では、基本治療の終了後にもう一度必要な検査を行い、どの程度改善がみられたかを再評価します。
ここでいう基本治療とは、スケーリング、ルートプレーニングという歯の清掃のことを指しています。
こちらの再評価であまり改善が見られないケース、具体的には4mm以上の深さの歯周ポケットが残っている部位に関しては、フラップ手術の処置が検討されます。
また、口内がきちんと清掃されていることや、糖尿病、高血圧などの全身疾患を患っていないこと、喫煙をしていないことなども適応条件です。
フラップ手術の一般的な流れ
フラップ手術を行う場合は、まず手術を行う歯の周りに麻酔をし、メスで歯茎を切って開いていきます。
こうすることにより、歯石のある場所や量、どの部分まで広がっているかなどについて、直接目で確認していくことが可能です。
その後、器具を使って歯石をキレイに取り除いていき、歯の表面を滑らかに仕上げていきます。
骨が尖っている場合、少し削って丸くしていきます。
また、全て取りきれたことを確認できたら、切り開いた歯茎をきちんと縫い合わせていきます。
これで手術は終了です。
フラップ手術のメリット
歯科クリニックでフラップ手術を受けることのメリットは、主に以下の通りです。
・汚れを隅々まで除去できる
・歯周ポケットが浅くなり、歯茎が腫れにくくなる
・歯茎の中に歯石が溜まりにくくなる
・歯周病による口臭が軽減する
・磨き残しが少なくなる
フラップ手術は、直視下で行うことができる手術であるため、歯石や細菌の取り残しはほとんど発生しません。
また、歯周ポケットが改善されることにより、悪化した口内環境はリセットされ、自宅で行うプラークコントロールのしやすさや効率もアップします。
フラップ手術のデメリット
フラップ手術は、歯茎の切開を伴う外科治療です。
そのため、切開した傷が治るまでには数週間を要し、腫れや痛みが出ることもあります。
また、フラップ手術を行った後、歯茎が下がることにより、相対的に歯が長く見えることがあります。
その他、歯茎が下がって歯の根っこが見えることで、知覚過敏の症状が出ることも考えられます。
ちなみに、フラップ手術後、歯周組織が完全に元通りになることが理想的ですが、実際には歯槽骨、セメント質、歯根膜はほとんど再生されることはありません。
病気の組織を取り除いた後は、いわば歯肉が入り込み、くっついただけの状態となり、その場合は、健康な歯茎に比べて、歯周病再発のリスクがどうしても高くなってしまいます。
フラップ手術の費用相場について
フラップ手術は、治療する歯1本につき7,000円が相場です。
このとき、歯周組織の再生治療も同時に行った場合、1本につき2万円~2万5,000円程上乗せされます。
ここでいう歯周組織の再生治療とは、主にエムドゲイン法(歯周組織再生療法)を指しています。
こちらは、歯周病によって破壊された歯槽骨や歯根膜に対し、タンパク質の一種であるエムドゲインを塗布することにより、歯周組織の再生を図るというものです。
また、保険適用の場合は、上記の金額から3割負担となります。
ちなみに、再生医療の中でもより高度な骨移植に関しては、保険適用外の扱いとなるため、10万円程かかると考えられます。
保険診療は治療方法が限られているので、治療費用にそれほど差がありませんが、自由診療では治療方法や使用材料を幅広く選択できるため、費用にばらつきがあります。
まとめ
ここまで、歯周外科治療の一つであるフラップ手術について解説してきましたが、いかがでしたでしょうか?
歯周病を患っているすべての方が、こちらの治療を受けるとは限りませんが、以前から歯周病の症状があったにもかかわらず、放置してしまった方は、適応される可能性があります。
また、そのような方は、事前にフラップ手術の概要やメリット、デメリットなどについて把握しておかなければいけません。