基本的な歯周病治療と一口に言っても、こちらにはさまざまな種類があります。
例えばスケーリングやルートプレーニング、ブラッシング指導などです。
また場合によっては、暫間固定という処置を受けることもあります。
ここからは、歯周病治療の一つである暫間固定について詳しく解説します。
暫間固定の概要
暫間固定は歯周病の症状を改善する処置の一種です。
何らかの原因でぐらついた歯を、両隣の歯などと一時的に固定します。
こちらは主に歯周病で痛みがあり、ものを噛めない場合などに用いられます。
また歯周病治療を行う予定の患者さんにも行われる場合があります。
その他、歯をぶつけて脱臼した場合にも採用されることがあります。
歯周病治療を行う歯科クリニックでは、基本的にこちらの処置を取り扱っています。
もちろん、冒頭で触れたスケーリングやルートプレーニングを併用することも多いです。
暫間固定のメリット
歯周病治療の一つである暫間固定には以下のようなメリットがあります。
・歯の動揺を軽減できる
・咬合力や咀嚼力を分散できる
・歯周組織の安静を確保できる
・食片圧入を防止できる
・歯の移動を予防できる
・噛み合わせや咀嚼機能を改善できる
・不快感や疼痛がなくなる など
歯周病が進行すると、歯茎が不安定になって歯が動揺します。
なぜなら歯を支えている歯槽骨が溶け、歯茎もブヨブヨになってしまうからです。
暫間固定を受ければ、こちらの動揺を最小限に抑えられます。
また咬合力や咀嚼力の分散により、動揺する歯への負担も軽減できます。
これらの効果は歯周組織の安静確保、動揺歯の修復治癒促進にもつながります。
ちなみにぐらつきを抑えることで、食片圧入も防止できます。
食片圧入は、咬合咀嚼時に食べ物が歯間部に強く押し込まれる状態です。
こちらは歯冠乳頭や辺縁歯肉への損傷を引き起こします。
簡単にいうと、歯周病を悪化させるということです。
暫間固定を受ければ、このような不安も解消されます。
もちろん動揺が落ち着くことで噛み合わせや痛みの良化も期待できます。
暫間固定の方法について
暫間固定の方法は歯科クリニックによって異なります。
主に以下のいずれかの材料が採用されます。
・接着性レジン
・ワイヤー
・連結冠
もっとも一般的なのは、接着性レジンを使用した方法です。
こちらはエナメルボナドシステムと呼ばれるものです。
透明の接着剤を使用するために、審美性が高いのが特徴です。
その他、ワイヤーによって金属線結紮法を行う方法もあります。
歯周病の症状がひどく歯の動きが激しい場合などには、針金を用いて固定します。
連結冠を使用した固定法は被せ物を連結して作製し、装着するというものです。
前述した方法と比べて、治療後に外れることがほとんどありません。
ただしこちらを適用するには歯を削る必要があります。
暫間固定の期間について
暫間固定の期間については、症例によって大きく変わってきます。
一般的には、1ヶ月以上は固定を継続しなければいけません。
またその後経過観察を行い、最終的には6ヶ月を目安に行われることが多いです。
ちなみに先ほど触れた連結冠による固定法は、永久固定として行われることもあります。
つまり接着性レジンなどの固定を行った後に適用するケースがあるということです。
連結冠による永久固定が必要かどうかは、歯科クリニックの医師に判断されます。
暫間固定の注意点
暫間固定は歯周基本治療の一種です。
しかし、いきなりこちらの治療法が適用されるケースはほとんどありません。
患者さんが疼痛を訴えている場合、咀嚼機能に障害がある場合は早期に行います。
一方それ以外では、基本的にプラークコントロールが優先されます。
炎症を軽減し、咬合調整を行っても咬合状態が安定しない場合に初めて適用されます。
また暫間固定は、あくまで対症療法です。
対症療法は姑息的療法とも呼ばれるものです。
具体的には表面化している症状を緩和させ、苦痛を和らげるための治療です。
そのため、歯周病を根本から完治させることはできません。
治療後には歯周病が進行しないように、定期的な経過観察が必要です。
暫間固定で対応できない場合はどうする?
重度の歯周病では、今にも歯が抜け落ちそうになっている場合があります。
このような場合、全体的に歯の動揺が見られる可能性が高いです。
こちらは暫間固定での対応が難しいです。
歯周病が重度にまで進み、骨が歯根の先まで吸収している場合は抜歯が選択されます。
ちなみに抜歯を行っても、深い歯周ポケットが残る場合があります。
こうなると歯周ポケット内に細菌が繁殖し、歯周病が再度悪化することが考えられます。
この段階にまで達すると、歯周外科治療という歯茎の手術が適用されます。
まとめ
ここまで、歯周病治療の一つである暫間固定について解説してきました。
暫間固定は歯周基本治療の中では、それほど優先度の高い治療ではありません。
それでもさまざまな方法や効果があることから、代表的な治療として重宝されています。
ただし歯周病を根本から治すには、他の歯周基本治療も必要不可欠です。
歯石や噛み合わせの問題などを解決することで、初めて歯周病にアプローチできます。
