インプラント治療では、人工歯根を顎の骨に埋め込み、時間をかけてゆっくり定着させていきます。
これにより、入れ歯など他の歯を補う治療に比べて、強い咀嚼力を実現できます。
しかし、場合によってはインプラントがなかなか骨に定着しないこともあります。
今回はこちらの原因を中心に解説します。
正しいインプラント治療の流れ
インプラント治療では、まずカウンセリングや検査、治療計画の作成などを行い、患者さんが納得した上で契約を結んで治療がスタートします。
またその後は、一次手術と呼ばれる人工歯根の埋入手術が行われます。
最初にチタン製の人工歯根を顎の骨に埋め込み、それが結合して固定されるのを待ちます。
このように、チタンと骨が結合する現象のことをオッセオインテグレーションといいますが、場合によっては、なかなか定着しないことがあります。
人工歯根が定着して初めて、アバットメントや上部構造を取り付ける二次手術ができるため、固定されなければいつまでも治療が中断されたような状態になります。
インプラントが骨に定着しない原因3選
インプラントがなかなか骨に定着しない原因としては、主に以下の3つのことが挙げられます。
・位置がずれている
・ドリルによるオーバーヒート
・歯ぎしり
各項目について詳しく説明します。
位置がずれている
インプラントが骨に定着せず、固定されない原因としては、まず埋入位置がずれていることが挙げられます。
人工歯根を埋め込む位置、深さなどが適切でなければ、うまく骨と結合しない可能性があります。
またこのような事態は、治療計画が適切でなかったことや、患者さんの歯や歯茎などに問題があったことなどで引き起こされます。
ドリルによるオーバーヒート
インプラント治療では、ドリルを使用して顎の骨に穴を開け、そこに人工歯根を埋め込みます。
しかし骨の硬さなどを考慮せず、適切なドリリングができなかった場合、骨にダメージを与えてしまい、インプラントがなかなか定着しなくなります。
このようなケースは極めて稀ですが、どれだけ実績のある歯科医師も人間であるため、人為的なミスが起こる可能性はゼロではありません。
歯ぎしり
慢性的な歯ぎしりが原因で、人工歯根の定着が遅れるというケースもあります。
特に就寝中、無意識のうちに行っている歯ぎしりは、非常に強い力がかかるものです。
人が思いっきり噛み締めたときの力は70kg程度とされていますが、就寝中の歯ぎしりではその数倍もの力がかかります。
そのためインプラント治療を受ける時点で歯ぎしりがある場合は、人工歯根への負担が大きくなり、定着を阻害してしまう可能性があります。
治療後にインプラントが動く原因は?
インプラントが無事に定着し、アバットメントや上部構造の装着が完了すれば、一旦インプラント治療は完了です。
しかし、一度定着したにもかかわらず、治療後に再び人工歯根がグラグラ動くようになるケースがあります。
このような場合は、以下の原因が考えられます。
・アバットメントの緩み
・インプラント周囲炎
人工歯根と上部構造をつなぐ役割を果たすのがアバットメントですが、こちらが緩んだり壊れたりすると、インプラント全体が動くようになります。
アバットメントが緩む主な原因は、インプラントにかかる過剰な力です。
インプラントは天然歯とは違い、歯根と顎の骨の間でクッションのような役割を果たす歯根膜が存在しません。
そのため、噛む力が吸収されず、直接インプラントにかかります。
特に歯ぎしりがある方は、治療後もインプラントが動く可能性が高いため、注意しなければいけません。
また治療後にインプラントがグラグラ動く場合、インプラント周囲炎を発症している可能性もあります。
インプラント周囲炎は、歯周病菌が原因で起こる病気であり、インプラント周辺の歯茎や顎の骨などの歯周組織に炎症が生じます。
最初は赤みや腫れが出る程度ですが、重症化すると人工歯根が動揺し、最終的には抜け落ちてしまいます。
前述の通りインプラントには歯根膜がないため、天然歯よりも細菌に対する抵抗力が弱く、インプラント周囲炎が進行するスピードも通常の歯周病より早いです。
インプラントが骨に定着しなかった場合の対処法
インプラントが骨に定着しなかった場合、一度埋め込んだ人工歯根を抜いて再度埋め直すか、より長い時間をかけて定着を進めていくことになります。
また治療後の再治療を行う場合は、基本的に保証の対象になります。
歯科クリニックによって多少違いはありますが、治療後すぐの場合は無償、数年経過しても保証期間内であれば無償で再治療が可能です。
ただし保障を受けるには、歯科クリニックの定期検診に通うなど、定められた条件を満たしていなければいけません。
まとめ
インプラントは極めて安全な治療ですが、必ずしもスムーズに定着するとは限りません。
どのような名医による治療であっても、1%程度の確率で結合しないことがあります。
そのため、もし治療がうまくいかなかったとしても、焦る必要はありません。
よほど大きな医療ミスでない限り、歯科クリニックは対処してくれますし、再治療も基本的には無償で受けられます。