インプラント治療では、顎の骨に人工歯根を埋め込み、その上に上部構造と呼ばれる人工歯を被せます。
また顎の骨の高さや厚みが足りない場合、骨造成と呼ばれる治療を行うことがありますが、このうちの一つにソケットリフトという方法があります。
今回は、ソケットリフトの概要やメリット・デメリットについて解説します。
ソケットリフトの概要
ソケットリフトは上顎洞底挙上術とも呼ばれるもので、文字通り上顎の骨の再生手術の一つです。
口内から上顎洞という鼻の下あたりにある部分の底部を持ち上げて隙間をつくり、骨移植や再生療法などで骨造成を誘導します。
上顎の臼歯部(奥歯の部分)に、インプラント治療を行うために十分な長さの垂直的な骨の量が得られない場合に行われます。
ソケットリフトの一般的な流れ
インプラントのソケットリフトは、一般的に以下のような流れで行われます。
・麻酔
・インプラントの穴の掘削
・上顎洞粘膜を持ち上げる
・上顎洞粘膜の問題を確認する
・人工の骨の材料を入れる
・インプラントを入れる
・縫合
まずはしっかりと局所麻酔を行い、治療中に痛みが出ないように準備します。
そして歯茎を切開・剥離し、インプラントを埋め込むための穴を掘る準備をします。
その後上顎洞のギリギリまでインプラントの穴を掘り、小さな穴から慎重に上顎洞粘膜を持ち上げます。
このとき、上顎洞粘膜が破れていないかをしっかり確認します。
次に人工の骨を入れていきます。
こちらの骨は顆粒状であり、奥から丁寧に詰めていきます。
人工の骨が入ったらインプラントを予定していた位置に入れ、インプラントがきちんと固定できれば、歯茎を元の位置に縫合します。
最後にCT撮影を行って、ソケットリフトの治療は完了です。
ソケットリフトのメリット
ソケットリフトのメリットは主に以下の通りです。
・上顎の骨が薄くてもインプラント治療を受けられる
・身体の負担が少ない
・インプラント治療を同時に行える
各メリットについて詳しく説明します。
上顎の骨が薄くてもインプラント治療を受けられる
ソケットリフトのメリットは、上顎の骨が薄くても、インプラント治療を受けられるという点です。
特にインプラント治療の症例が少ない歯科クリニックの場合、上顎の奥歯の骨が薄い方は、インプラント治療の対象外となるケースが多いです。
一方ソケットリフトに対応している歯科クリニックであれば、上顎の骨が薄くても、インプラント治療で失った歯をカバーできる可能性が高いです。
身体の負担が少ない
ソケットリフトは、比較的身体の負担が少ない治療でもあります。
インプラントを埋入する穴を利用し、骨補填剤を充填する方法であるため、骨造成のためにわざわざ別に歯茎を切開するといったことはしません。
そのため、患者さんの身体の負担は軽減されます。
インプラント治療を同時に行える
ソケットリフトには、インプラント治療を同時に行えるというメリットもあります。
インプラントの骨造成治療には、ソケットリフトの他にサイナスリフトというものもあります。
サイナスリフトは、まだ別の方法で骨造成を目指すものですが、こちらは骨が造成されるまで数ヶ月~1年程度の期間を要すことが多いです。
そのため、すぐにインプラント治療を受けることはできません。
一方ソケットリフトは、骨造成と同時にインプラント治療を行えるため、治療期間は大幅に短縮されます。
ソケットリフトのデメリット
インプラントのソケットリフトには、以下のようなデメリットもあります。
・最低限の骨の厚みが必要
・再生できる骨の範囲が狭い
・手術野を確認しながら治療ができない
各デメリットについて詳しく説明します。
最低限の骨の厚みが必要
ソケットリフトのメリットは、骨の厚みがなくてもインプラント治療を受けられる点だという風に解説しました。
しかし、ソケットリフトは最低限の骨の厚み(5mm以上)がないと行えない治療です。
そのため、誰もがソケットリフト⇒インプラント治療という流れで治療できるわけではありません。
再生できる骨の範囲が狭い
ソケットリフトは、再生できる骨の範囲が他の骨造成治療と比べて狭いです。
身体への負担は少なくできるものの、広範囲の治療には向いていません。
手術野を確認しながら治療ができない
ソケットリフトは、大きく骨を広くことはせず、インプラント埋入側から小さく開けた穴から施術を行います。
こちらは身体の負担を減らすことにつながりますが、残念ながらこの方法では、上顎洞の状況を目視で確認することはできません。
そのため、治療の難易度や失敗のリスクは少し高めです。
まとめ
ソケットリフトは古くから行われている骨造成治療の一つで、超音波機器などを導入することで、以前よりも患者さんの負担を大きく減らしています。
しかし誰もが治療を受けられるとは限らず、いまだにサイナスリフトなどに比べて難易度は高いです。
もし骨造成をしなければインプラント治療を受けられないという場合は、歯科医師から十分ソケットリフトについての説明を受けましょう。