インプラント治療と聞くと、失った歯1本につき1本の人工歯根を埋め込む治療を想像する方も多いでしょう。
しかし、実際は他にもさまざまなタイプがあり、そのうちの1つがインプラントオーバーデンチャーです。
今回はインプラントオーバーデンチャーの概要、メリット・デメリットを解説します。
インプラントオーバーデンチャーの概要
インプラントオーバーデンチャーは、残存歯やインプラントを入れ歯で覆いかぶせる治療法です。
単にオーバーデンチャーと呼ばれることもあります。
イメージは総入れ歯ですが、入れ歯が粘膜で噛む力を支えているのに対し、インプラントオーバーデンチャーは歯やインプラントが支えになります。
そのため、全体の安定性が高く、噛む力も強いです。
ちなみにオーバーデンチャーという治療法は、総入れ歯でも部分入れ歯でも適用できる汎用性の高い治療法です。
構造自体も非常にシンプルであり、修理も簡単です。
インプラントオーバーデンチャーのメリット
インプラントオーバーデンチャーのメリットとしては、主に以下のことが挙げられます。
・インプラントの本数を減らせる
・噛み心地が安定している
・バネが存在しない
・取り外してケアできる
・発音が明瞭になる
各メリットについて詳しく説明します。
インプラントの本数を減らせる
インプラントオーバーデンチャーは、顎の骨に埋め込むインプラントの本数を減らすことができます。
固定式のインプラントの場合、つくる歯の頭に比例したインプラントの本数が必要です。
例えば上顎すべてをインプラントにする場合、7~8本の人工歯根を埋め込むことになります。
一方インプラントオーバーデンチャーは、4~6本ほどの本数で治療が可能です。
また下顎であれば顎の骨が硬いため、さらに本数を2~4本まで減らすことができます。
人工歯根を埋め込む本数が少なければ少ないほど、身体にかかる負担は軽減されますし、治療費もお得になります。
噛み心地が安定している
インプラントオーバーデンチャーは、人工歯根で入れ歯を支えるため、一般的な入れ歯に比べると噛む力や安定性の向上が期待できます。
通常の入れ歯では、食事や会話の途中にずれてしまったり、意図せず外れてしまったりすることがあります。
インプラントオーバーデンチャーでは、このような心配はありません。
バネが存在しない
インプラントオーバーデンチャーには、部分入れ歯のようなバネが存在しません。
そのため、他の残存歯に負担をかけず、天然歯の寿命を延ばせるというメリットがあります。
部分入れ歯の場合、隣の歯にクラスプというバネをかけ、入れ歯を固定します。
しかし、バネをかけている歯は負担が大きくなりますし、その負担によって歯を失いやすくなることも考えられます。
インプラントオーバーデンチャーはインプラントや歯で支えるため、バネを装着する必要がありません。
取り外してケアできる
取り外してケアできるという点も、インプラントオーバーデンチャーの大きなメリットです。
通常のインプラントや、インプラントオーバーデンチャーと似たような構造を持つオールオン4は、どちらも上部構造と固定源の取り外しができない治療法です。
一方インプラントオーバーデンチャーは、上部構造の人工歯だけを取り外してケアできるため、汚れが溜まりにくいです。
発音が明瞭になる
インプラントオーバーデンチャーは、上部構造の入れ歯がずれにくいため、発音が明瞭になります。
入れ歯であっても、慣れてくれば発音はしやすくなりますが、使用中にずれてしまって発音が不明瞭になることがあります。
インプラントオーバーデンチャーは、口内でずれることがほとんどないため、一度装着に慣れれば発音に影響が出ることは考えにくいです。
インプラントオーバーデンチャーのデメリット
インプラントオーバーデンチャーは、あくまでの入れ歯の延長線上にある治療です。
そのため、装着することによって気持ち悪さを感じることもあります。
本来の歯茎の上に、入れ歯の床と呼ばれる歯茎の部分が乗ってくるため、強い嘔吐反射がある方などには向いていません。
またインプラントオーバーデンチャーを装着した直後は、歯茎と入れ歯の床部分が擦れ、痛みを感じることもあります。
さらにインプラントオーバーデンチャーは、顎の骨の量が少なくても受けられる治療ですが、すべての方に適用するわけではありません。
人工歯根を埋め込む際は、切開などの外科手術を行う必要があります。
持病があって外科手術を受けるのが難しい方、ヘビースモーカーの方などは、治療を断られる可能性があります。
まとめ
インプラントオーバーデンチャーは、多くの歯を失った方でも、身体の負担を抑えながら人工歯根を埋め込むことができる治療法です。
また経済的にあまり余裕がない方でも、インプラントオーバーデンチャーであれば受けられる可能性があります。
健康状態などによっては適用できないこともありますが、興味がある方はぜひ歯科クリニックに相談してみてください。