矯正治療を受けようとする方は、治療中の見た目や痛みなど、気になる点が多くあるかと思います。
また、特に多くの方が気になるのは、やはり費用です。
矯正治療は、原則保険適用外の自由診療であるため、費用が気になるのは当然です。
今回は、矯正治療に保険が適用されない理由を中心に解説します。
矯正治療に保険が適用されないのはなぜ?
矯正治療は原則自由診療であり、治療費の10割を患者さんが負担しなければいけません。
こちらは、矯正治療が絶対に受けなければならない治療ではないことが理由です。
例えば虫歯や歯周病については、放置すると口内だけでなく全身に悪影響を及ぼすため、基本的には治療を受けなければいけません。
つまり必要な治療であり、虫歯治療・歯周病治療には保険が適用されます。
一方、矯正治療は症状を治療するというよりかは、どちらかというと見た目をキレイに整える治療です。
そのため、必要な治療とは言えず、日本の健康保険では対象外とされています。
ちなみに、保険適用の有無に使用する矯正装置の種類は関係ありません。
ワイヤー矯正やマウスピース矯正など、いずれの矯正方法も自由診療として提供されています。
矯正治療で保険が適用される条件は?
矯正治療は審美目的が強いため、基本的には保険の対象外ですが、例外もあります。
先天的な疾患がある場合や、前歯を3本以上失っている場合、顎変形症を患っている場合などは保険が適用されることもあります。
先天的な疾患とは、文字通り生まれつきの疾患のことであり、その中には歯並びや噛み合わせを大きく狂わせるものもあります。
このような疾患を発症している場合は、保険適用で矯正治療を受けられます。
具体的には、以下のようなものが先天的な疾患に該当します。
・唇顎口蓋裂
・ダウン症候群
・筋ジストロフィー
・先天性部分無歯症 など
また子どもの場合は、永久歯の前歯が3本以上生えてこない場合、矯正治療が保険診療になります。
ただし、こちらは前歯が3本生えてこず、埋状歯開窓術が必要と判断された場合に限られます。
その他、顎変形症がある場合も、治療の一環として矯正治療を保険診療で受けられることがあります。
顎変形症は顎の骨が上下で大きくずれていたり、骨格が原因で顔の左右が非対称になり、噛み合わせが悪くなったりする疾患です。
顎が成長するとともに、少しずつ不正咬合の症状がひどくなっていくのが特徴です。
ちなみに顎変形症の治療を行う場合であっても、顎口腔機能診断施設に指定されている医療筋において診断を受けなければ、保険適用とははりません。
海外の矯正治療は保険適用で治療費も安いって本当?
海外では、矯正治療や保険診療に関する仕組みが日本とは異なります。
例えばアメリカの場合、医療保険があるため矯正治療が安いという話を聞くことがありますが、アメリカは日本のように国民皆保険制度がありません。
そのため、自身で高額な民間の医療保険に加入しなければ、矯正治療費は十分にカバーされないことが多いです。
また海外の医療保険は自動車保険のようなもので、グレードによってサービスが異なります。
民間の保険会社は営利目的で販売しているため、既往歴やリスクの高い方は保険に加入することすらできません。
さらに、グレードの低いプランには、高額な歯科治療が含まれていないことも多いです。
そのため、海外の方が安く矯正治療を受けられるというのは間違いだと言えます。
ただし、スウェーデンのように未成年の矯正治療費が無料など、非常に保険制度が手厚い国もあります。
矯正治療の費用を抑えるには?
日本でも矯正治療の費用が保険適用になることはありますが、前述の通りかなり特殊なケースが多いです。
そのため、基本的には自由診療になると考えておくべきです。
また、保険適用で矯正治療を受けるのは難しいですが、以下のような方法で費用を抑えることはできます。
・医療費控除
・デンタルローン
医療費控除は、1月1日から12月31日までの1年間にかかった医療費の総額が10万円を超える場合に、確定申告の際に所得税の一部が還付される制度です。
こちらは、矯正治療を含む歯科治療費も対象になります。
そのため、利用すれば実質矯正治療にかかる費用は抑えられます。
さらに歯科クリニックによっては、デンタルローンに対応しているところもあります。
デンタルローンは、信販会社や金融機関などが提供する、歯科治療費専用のローン商品です。
歯科クリニックが申込窓口になっていることが多く、矯正治療の費用もカバーできますが、借入は原則として1回限りです。
ちなみに、デンタルローンは審査に通過しなければ利用できません。
まとめ
矯正治療にかかる費用に不安を抱える方は多いかと思いますが、基本的には虫歯治療のように、数千円程度の金額では受けられないと考えるべきです。
もちろん矯正治療が必要な治療かどうかは価値観が分かれるところですが、現在の日本の制度で審美治療扱いになっている以上、受け入れるしかありません。
ただし、医療費控除やデンタルローンなど、費用を用意するのが厳しい方にとっての選択肢はいくつか用意されています。