歯を失ってしまった部分をインプラントで補う場合、即座に治療を完了させることはできません。
そのため、なるべく早く自身の歯を取り戻したい方でも、ある程度時間がかかることは覚悟する必要があります。
では、インプラントの治療期間はなぜ長いのでしょうか?
今回はこちらの点を中心に解説します。
インプラントの治療期間はどれくらい?
インプラントの平均的な治療期間は6ヶ月前後です。
こちらはあくまで平均であるため、3ヶ月程度で終わる方もいれば、1年程度かかる方もいます。
また歯科クリニックで行われる代表的な歯科治療に虫歯治療が挙げられますが、こちらは中程度であっても数週間ほど歯科クリニックに通うだけで治療できます。
このことを考えても、インプラントの治療期間がいかに長いかがわかります。
ちなみにインプラントは治療期間が長いですが、1回1回の治療時間はそれほど長くありません。
そのため、拘束時間が長いというわけではありませんが、治療期間が長い分通院は何度も行う必要があります。
もちろん、通院の回数が多いということは、その分治療費だけでなく交通費もかかりやすくなるということを意味しています。
特に遠方の歯科クリニックに通う場合、交通費だけで年間かなりの金額を負担しなければいけません。
インプラントの治療期間が長い理由
インプラントの治療期間が他の治療と比べて長いことには、主に以下の2つの理由があります。
・段階的なプロセスが必要だから
・骨との結合に時間がかかるから
各項目について詳しく説明します。
段階的なプロセスが必要だから
こちらはインプラントに限ったことではありませんが、インプラント治療を行うにはいくつかの段階的なプロセスを踏む必要があります。
そのため、治療期間が長くなるのは致し方ないと言えます。
具体的にはまず歯科医師とのカウンセリングにより、患者さんの歯や全身の状態、要望などがチェックされます。
その後CT撮影を行い、人工歯根の埋入が可能かどうかを正確に判断します。
検査の結果問題がなければ治療が実施され、治療が完了した後は人工歯根と顎の骨の結合を待ちます。
そして結合するための期間が終了すると、インプラントに被せる上部構造という人工歯が作製されます。
上部構造は患者さんの本来の歯の色や形状、色調などにあわせてつくられるため、こちらの工程もある程度期間を要します。
骨との結合に時間がかかるから
先ほど少し触れたように、インプラントの治療では、人工歯根が顎の骨と結合するのを待たなければいけません。
こちらはオッセオインテグレーションと呼ばれるもので、人工歯根と骨が生物学的に結合するまでには、最低でも数ヶ月を要します。
このオッセオインテグレーションがあることで、どうしてもインプラントの全体的な治療期間は長くなってしまいます。
顎の骨に人工歯根をうまく埋入できたとしても、しっかり骨と結合して固定されなければ、快適な使い心地を実現することはできません。
インプラントの治療期間がさらに長引く理由
インプラントの治療期間は、ただでさえ他の歯科治療に比べて長めですが、以下の理由によってより長くなることもあります。
・顎の骨の量が少ない
・歯茎の状態が悪い
人工歯根を埋め込む際は、歯茎を切って顎の骨に穴を開け、そこに人工歯根を埋入して上部構造を取り付けます。
しかし、このとき顎の骨には、人工歯根を埋入しても耐えられるほどの骨量が必要です。
そのため、元々顎の骨の量が少ない方は、前もって骨造成という治療を受けなければいけません。
骨造成については4~7ヶ月程度かかることが予想されるため、顎の骨の量が少なければ、必然的にインプラントの治療期間は長期化します。
また歯茎の状態が良くない場合も、インプラントの治療期間は長引きやすいです。
例えば歯周病で歯茎が後退している場合、そのままインプラント治療を受けても、顎の骨が露出してしまう可能性があります。
そのため、歯茎を回復させる手術が必要であり、こちらは1~2ヶ月程度かかることが想定されます。
インプラント治療と合わせると、トータルで半年以上はかかります。
インプラント治療を長引かせる生活習慣
インプラント治療を長引かせる生活習慣と言えば、何と言っても喫煙です。
喫煙をすることにより、タバコに含まれるニコチンが血管を収縮させ、血流が悪くなります。
また人工歯根と骨の結合が阻害されることもあり、治療に多大な影響が出ることも考えられます。
ちなみに、喫煙は歯茎の状態を悪化させることにもつながるため、基本的にはインプラント治療の前から禁煙しなければいけません。
まとめ
歯を失った部分がある方は、なるべく治療期間が短い治療を受けたいと考えるでしょう。
すぐに歯が手に入れば、咀嚼や発音など生活に必要な動作に支障が出にくくなるからです。
しかし、残念ながらインプラントは、数日や数週間で手に入るものではありません。
じっくり時間をかけて人工歯根と骨を結合させることで、ようやく天然歯と同程度の性能を発揮できます。