総入れ歯は上下いずれかの歯をすべて失ったときに装着する入れ歯であり、床と呼ばれるピンク色をした土台に人工歯が並んでいて、口内にはめる形で装着します。
また、部分入れ歯は一部の歯をカバーするための入れ歯で、隣り合う歯に金具で固定します。
今回は、入れ歯の使用に向いている方の主な特徴について解説します。
総入れ歯の使用に向いている人の特徴5選
歯を失った方の中でも、以下の特徴を持つ方は総入れ歯の使用に向いていると言えます。
・初めて歯を失った
・高齢もしくは身体が弱っている
・重度の歯周病を患っている
・左右の歯がバランス良く抜けている
・メンテナンスを十分に行えない
各項目について詳しく説明します。
初めて歯を失った
初めて歯を失った方は、入れ歯の使用に向いていると言えます。
なぜなら、入れ歯には保険が適用される場合があるからです。
保険診療の部分入れ歯は、3割負担の場合で5,000~10,000円程度、保険診療の総入れ歯は10,000~15,000円程度で作製できます。
そのため、歯を失った場合の第一歩として、気軽に試しやすいという特徴があります。
ちなみにインプラントも歯を失ったときに適用される治療法ですが、こちらは原則保険が適用されないため、予算に余裕がない方は治療を受けるのをためらいやすいです。
高齢もしくは身体が弱っている
高齢の方や身体が弱っている方も、入れ歯の使用に向いています。
入れ歯治療は患者さんの歯型などを採取しますが、外科手術を伴うものではありません。
そのため、患者さんの身体の負担は最低限に抑えられます。
一方、インプラントは顎の骨に人工歯根を埋め込み、その上に上部構造を被せる外科治療が必要です。
このことから、高齢の方や体力のない方には向いていないと言えます。
ちなみに、疾患を患っている方の中には、薬を服用している方もいるかと思います。
服用している薬の種類によっては、インプラント治療が受けられない可能性があるため、そのような場合は必然的に入れ歯が選ばれやすくなります。
重度の歯周病を患っている
重度の歯周病を患い、歯茎がブヨブヨの状態になっている方も、インプラント治療より入れ歯治療が向いています。
前述の通り、インプラント治療では顎の骨に人工歯根を埋入しなければいけないからです。
歯周病を患い、歯茎が土台として不安定な状態になっていると、人工歯根がうまく定着しません。
その結果、インプラント治療は失敗に終わることがあります。
これに対し入れ歯は、部分入れ歯であっても総入れ歯であっても、歯茎の上に被せるように装着するだけで済みます。
もちろん、歯周病の症状を改善しなくても良いというわけではありませんが、インプラントのように歯茎そのものの安定感は求められません。
左右の歯がバランス良く抜けている
入れ歯に向いている方の特徴としては、左右の歯がバランス良く抜けていることも挙げられます。
こちらは片方だけ抜けている場合、入れ歯の装着によって噛み合わせが悪化するリスクがあるからです。
入れ歯は患者さんの口内に合わせ、オーダーメイドのものを作製します。
しかし、完全に天然歯と同じような噛み合わせを実現するのは難しいです。
特に保険診療の部分入れ歯は、自由診療のものと比べて精度が劣ることがあります。
そのため、片方だけ歯がない状態だと、入れ歯がある方とない方とで噛み合わせが変わりやすいです。
一方、左右バランス良く歯が抜けている場合、入れ歯の部分と入れ歯の部分が噛み合う可能性が高く、こうなると全体の噛み合わせも合いやすくなります。
メンテナンスを十分に行えない
メンテナンスを十分に行えない方も、インプラントより入れ歯が向いています。
インプラントの場合、定期的に歯科クリニックに通い、インプラントそのものや顎の骨の状態などをチェックしてもらわなければいけません。
こちらのメンテナンスに通わなければ、寿命が短くなってしまう可能性がありますし、治療後の保証も受けられなくなります。
一方、入れ歯もメンテナンス自体は必要ですが、入れ歯の場合はどちらかというと自宅で行うメンテナンスが主になります。
しっかりブラッシングをしたり、洗浄剤に浸けたりするだけでOKのため、通院の手間や身体の負担は少なくなります。
入れ歯が向いていない人は?
入れ歯治療に向いていないのは、口内の違和感に弱い方です。
特に総入れ歯の場合、口内に大きな異物が入ることになるため、使用時の違和感は強くなります。
もちろん、使用していればある程度慣れてきますが、嘔吐反射がひどい方などはそもそも入れ歯を装着するのも難しいかもしれません。
まとめ
入れ歯は歯を失った方にとってもっとも一般的な治療法ですが、すべての方が向いているわけではありません。
そのため、安易に部分入れ歯や総入れ歯を選択することは避けましょう。
向いている方の特徴を持つ方は選んでも問題ありませんが、その際はインプラントやブリッジなど、他の治療法についても把握しておくべきです。
もちろん患者さん自身で判断できない場合は、歯科医師の意見を採り入れるのも良いです。