歯周病は、虫歯と並ぶ代表的な口内トラブルの一つです。
発症すると歯茎の腫れや出血などを伴い、重度にまで悪化すると歯が抜け落ちるリスクもあります。
また歯周病の大きな特徴としては、感染者数が非常に多いということも挙げられます。
今回は、多くの方が歯周病に罹患している主な理由を解説します。
歯周病の感染者数について
歯周病の感染者数は非常に多く、2001年にはもっとも感染者数が多い感染症として、ギネス世界記録にも認定されています。
2017年に発表された厚生労働省のデータによると、歯肉炎および歯周疾患の総患者数は約398万人で、前回の調査より66万人も増加しています。
内訳は男性が約162万人、女性が約236万と、女性の方が多くなっています。
またこちらの人数は、あくまで歯周病の継続的な治療を受けている方のみをカウントしたものです。
そのため、実際はもっと感染者数が多いことが予想されます。
歯周病の感染者数が多い理由5選
これほどまでに歯周病の感染者数が多い理由としては、主に以下のことが挙げられます。
・知らず知らずのうちに感染するから
・感染経路が多いから
・デンタルケアの意識が低いから
・甘いものが簡単に手に入るから
・高齢者が多いから
各項目について詳しく説明します。
知らず知らずのうちに感染するから
歯周病はサイレントディジーズ、サイレントキラーなどと呼ばれるくらい、ほとんど初期症状がなく、知らず知らずのうちに感染します。
そのため、適切な対処を行うのが難しく、正式に歯周病と認められる状態まで気付かないケースが多いです。
こちらが感染者数の多い理由の一つです。
少し歯茎の状態が悪いくらいであれば、歯科クリニックでプラークや歯石を除去することにより、健康な歯茎に戻せる可能性があります。
しかし一度歯周病を発症して歯茎がブヨブヨになったり、出血を伴ったりすると、なかなか簡単には治療できません。
感染経路が多いから
感染経路が多いことも、歯周病の感染者数が多い理由です。
歯周病の根本的な原因は、歯周ポケットと呼ばれる歯と歯茎の隙間や溝に歯周病菌が棲みつき、歯茎の下にある骨を溶かしていくことです。
また歯周病菌は、主に口内に残った食べカスやプラークに含まれますが、感染経路は食事以外にも数多くあります。
例えば親から子どもに対し、同じ箸で食事を与えた場合、歯周病がうつることが考えられます。
家族で箸やフォーク、スプーンなど、同じ食器を共有している場合も同様です。
さらに飲み物の回し飲み、親子間もしくは恋人間のキスなどによって感染するケースもあります。
これらの感染経路をすべて避けなければ、きちんとセルフケアを行っていたとしても、歯周病を予防することはできません。
デンタルケアの意識が低いから
こちらは特に日本人に言えることですが、日本人は他国に比べて、デンタルケアの意識が低いです。
そのため、歯周病に感染しやすくなっています。
特にブラッシングについては、正しい磨き方を意識していなかったり、歯ブラシだけを使用していたりするケースが多く見られます。
このような方法では、歯周病菌を排除することができません。
ブラッシングでは、歯と歯の間や歯茎の境目に蓄積するプラークを徹底的に除去しなければいけません。
もちろん、そのときには歯ブラシだけでなく、デンタルフロスや歯間ブラシも併用する必要があります。
しかし、これらのサポートアイテムについては、セルフケアの意識が高い一部の方にしか愛用されていないというのが現実です。
甘いものが簡単に手に入るから
こちらも日本限定の話ですが、日本では甘いものが簡単に手に入ることから、歯周病の感染者数が多くなっています。
日本は食べ物に溢れていて、1日3食どころか5食摂るという方もいます。
またお菓子などが充実していることから間食が多く、口内には食べカスやプラークが残りやすいです。
このような環境は、虫歯だけでなく歯周病のリスクも高めます。
歯周病の直接的な原因はプラークですし、糖分は歯周病菌が増殖しやすい環境をつくり出してしまうからです。
高齢者が多いから
日本は高齢者が多く、それに比例するように歯周病の感染者数も増加しています。
日本の高齢化は深刻であり、2023年10月時点の高齢化率は29.0%です。
こちらは総人口に占める65歳以上の人口の割合で、過去最高の数値を記録しています。
また高齢者は免疫力の低下、唾液の減少といった症状が見られやすくなります。
免疫力が下がると、歯周病菌に抵抗するのが難しくなりますし、唾液が減少すると歯周病菌の温床であるプラークを洗い流せません。
まとめ
歯周病は世界的に感染者数が多い疾患であり、特に日本では他を圧倒するほどの罹患率を誇ります。
しかしいまだに感染者数が減少しないのは、やはり総合的な歯周病の知識が乏しい方が多いからだと言えます。
なぜ歯周病を発症するのか、どうすれば防ぎやすくなるのかを多くの方が理解すれば、必然的に感染のリスクは軽減されます。