歯周病のリスクファクター(危険因子)の一つに、唾液の分泌量の減少が挙げられます。
唾液は口内を洗い流してくれるため、分泌量が減るとプラークが蓄積し、歯周病を引き起こします。
また唾液の分泌量が減少する原因は、さまざまなところに潜んでいます。
今回は主な原因について解説します。
歯周病につながる唾液の分泌量減少の原因6選
唾液がうまく分泌されなくなる原因としては、主に以下のことが挙げられます。
・加齢
・ストレス
・薬の副作用
・口腔疾患
・全身疾患
・その他
各項目について詳しく説明します。
加齢
年齢を重ねていれば重ねているほど、人は唾液の分泌量が少なくなります。
こちらは筋肉が衰えることにより、咀嚼筋が動く機会が減少し、唾液が分泌されにくくなるという仕組みです。
また年齢を重ねるにつれて、身体の水分量は少しずつ減っていくため、必然的に唾液もうまく分泌されなくなります。
さらに更年期に突入した場合、女性ホルモンが少なくなることから、唾液も少なくなってしまいます。
ストレス
現代社会を生きる方にとって、ストレスは避けられない問題の一つですが、特にストレスが強い方は唾液が減少しやすいです。
ストレスが強いと、自律神経の中の交感神経と副交感神経のうち、前者が緊張するようになります。
交感神経には唾液の分泌を抑制することがあるため、必然的に口内は乾きやすくなるという仕組みです。
こちらをストレス性ドライマウスといいます。
またストレス性ドライマウスを発症すると、歯周病だけでなくさまざまな口腔トラブルのリスクも高まります。
具体的には口内の炎症や潰瘍などが発症し、さらに口内環境が悪化するおそれがあります。
薬の副作用
疾患を患っている方は、それを治療するために薬を服用することもあります。
しかし薬の種類によっては、副作用によって唾液の量が減ってしまうことが考えられます。
例えば、アレルギーや花粉症の薬として知られる抗ヒスタミン薬、高血圧を抑える降圧薬などは、唾液が減少するリスクが高いです。
その他抗てんかん薬や抗パーキンソン病薬、精神安定剤などの服用も、唾液の分泌量減少につながります。
ちなみに、痛みを抑える鎮痛剤や胃薬などについては、疾患を持っていない方でも服用する機会が多いかと思います。
これらも副作用として唾液が減少し、口内が乾いてしまう可能性があるため、注意が必要です。
口腔疾患
口腔疾患を発症することにより、唾液が少なくなるというケースもあります。
ここでいう口腔疾患とは、主に唾液腺炎のことを指しています。
唾液腺炎は、耳の下や顎の下にある唾液腺が細菌やウイルスに感染し、炎症を起こす疾患です。
発症すると唾液腺が腫れたり、唾液の出口から膿が排出されたりします。
また慢性的な口内の乾きも生じるため、極めて歯周病のリスクが高い口内環境になってしまいます。
ちなみに唾液腺炎を発症している場合、食事の際に唾液が多く出ると痛みが強くなります。
全身疾患
全身疾患の中にも、唾液の分泌量が減少するものは多くあります。
具体的には、糖尿病や脳血管障害、腎臓病などの全身疾患が該当します。
糖尿病の方は血糖値が高くなるため、尿量が増加して脱水症状を起こしやすくなります。
身体の水分が減少するということは、唾液の分泌量も影響を及ぼすということを意味しています。
また脳血管障害とは、脳卒中や脳梗塞のことであり、こちらは口の筋機能低下による唾液腺への刺激低下を引き起こします。
さらに腎臓病の方は、人工透析を行うことで体内の水分が減少し、口内が乾きやすくなります。
その他
その他の原因としては、喫煙や飲酒、口呼吸や咀嚼量の少なさなどが挙げられます。
タバコに含まれる有害物質であるニコチンは、交感神経を刺激することにより、唾液の粘度を高くしたり、量を減らしたりします。
またお酒を飲む機会が多い方は、アルコールの利尿作用によって身体から水分が失われます。
そのため、飲酒量が多い方は歯周病のリスクが高いと言われています。
飲酒後はブラッシングがおろそかになることも、歯周病につながりやすい理由です。
さらに普段無意識のうちに口呼吸をしている方も、口内が乾燥して唾液が本来の役割を果たせません。
慢性的な鼻炎や花粉症などを患っている方は、常に口呼吸になっている可能性があるため、注意が必要です。
ちなみに食べ物をよく噛まない、いわゆる早食いの方も、副交感神経が刺激されず唾液がうまく分泌されなくなります。
しっかり唾液を出し、食べすぎによる肥満のリスクも軽減させるには、1口につき30回噛むことを目安にしましょう。
まとめ
歯周病を発症するということは、全身のさまざまな疾患のリスクも同時に背負うということです。
それほど危険な疾患であるにもかかわらず、歯周病予防への意識が高い方は決して多くありません。
また唾液の分泌量が減少し、歯周病につながるというのは決して珍しいケースではありません。
特に高齢の方は、前述した原因に該当しやすいため、注意が必要です。