歯周病を発症すると、口内にはさまざまなトラブルが生じます。
また全身疾患につながるリスクも高く、なかなか治すのが難しいという意味でも、歯周病は虫歯より厄介な症状と言えるかもしれません。
では、どのような状態になれば、歯周病が“治った”と言えるのでしょうか?
今回はこちらの条件を中心に解説します。
歯周病が“治った”と言える条件5選
治療を受けて以下の状態になった場合、歯周病は治ったといっても良いでしょう。
・歯茎の腫れが引く
・歯茎が出血しにくくなる
・歯茎の色がキレイになる
・歯周ポケットが浅くなる
・歯の動揺が正常な範囲に収まる
各項目について詳しく説明します。
歯茎の腫れが引く
歯石除去などの治療を受けたことにより、歯茎の腫れが引かなければ、歯周病は治ったとは言えません。
歯周病で歯茎が腫れるのは、歯周病菌が歯茎に炎症を起こすからです。
歯と歯茎の間にある歯周ポケットにプラークが溜まり、そこに歯周病菌が増殖すると、炎症が生じます。
そのため、歯周病を発症している方は、歯茎が盛り上がるような立体的な形になっています。
ひどい場合、正面から見たときに歯の表面が見えにくくなるほど腫れますが、歯周病治療を受ければこちらはある程度改善されます。
歯茎が出血しにくくなる
歯周病が治ったと言える条件には、歯茎から出血する頻度が減ることも挙げられます。
歯周病の影響によってブヨブヨになってしまった歯茎は、外部からの刺激にとても弱くなります。
そのため、ブラッシングや食事など、少しの刺激でも出血するようになります。
また就寝中歯ぎしりや食いしばりをしている方は、歯と歯茎に強い圧力がかかり、朝起きたとき口内が血まみれになってしまうことも考えられます。
このような出血の機会が少なくなれば、歯周病は以前よりも間違いなく症状が軽くなっていると言えます。
歯茎の色がキレイになる
歯周病が治ったと言える条件の一つとしては、歯茎の色がキレイになることも挙げられます。
歯周病を患っている方の歯茎は、赤黒かったり紫っぽかったりと、お世辞にも健康的な色をしていません。
一方、健康な歯茎は薄いピンク色をしていて、一目見れば健康な状態であることがわかります。
また歯茎が健康的な色をしている場合、歯茎の腫れや出血など、その他の症状も見られない可能性が高いです。
そのため、歯周病を治すためには、歯茎の色をキレイにすることが絶対条件です。
歯周ポケットが浅くなる
歯周ポケットが浅くなることも、歯周病が治ったと言える条件の一つです。
歯周ポケットは、歯と歯茎の間に形成される溝です。
こちらにプラークが溜まることで、歯周病は発症・進行します。
また健康的な歯茎を持つ方でも、多少は歯周ポケットが形成されています。
このとき、深さが3mm以下であれば、健康的な歯茎の範囲内だと言えます。
一方、3~4mmの場合は、軽度の歯周病を患っていると判断できます。
さらに4~6mmの場合は中程度の歯周病、6mm以上の場合は重度にまで進行していると考えられます。
そのため、歯科クリニックで歯周ポケットの深さを測れば、ある程度歯周病の治り具合がわかります。
ちなみに歯周ポケットの深さは、歯科クリニックで歯周プローブ(ポケット探針)という器具を用いて測定します。
1本の歯に対して数ヶ所に差し込み、どれくらいの深さがあるのかを測るという方法です。
歯の動揺が正常な範囲に収まる
歯の動揺が正常な範囲で治まることも、歯周病が治ったと言える条件です。
歯の揺れについては、健康な歯でも起こるものです。
こちらは生理的動揺と呼ばれ、通常は0.2mm程度の水平方向の揺れが確認されます。
また生理的動揺が起こる理由は、歯の歯根にある歯根膜というクッションのような組織が歯と顎の骨をつないでいて、その弾力性によって揺れが生じるからです。
一方こちらの正常な範囲に収まらず、明らかに歯がグラグラになっている場合、歯周病は治ったと言えません。
特に歯が抜けそうなほど動揺している場合は、重度もしくは末期の歯周病である歯槽膿漏だと考えられます。
歯周病に“完治”はない
歯科クリニックで行われる歯周病治療は、完治を目的に行われるものではありません。
歯周病でいうところの“治った”とは、病状が安定し、健康な状態を維持できることを指しています。
つまり元の状態に戻すというよりも、進行を止め、健康な状態に近づけることが歯周病治療の目的だということです。
一度症状が進行した歯周病は、完治させることが困難です。
もちろん病状が安定している場合であっても、プラークコントロールなどがうまくいっていない場合、再び歯茎が腫れたり出血したりすることがあります。
まとめ
歯周病は、日本人全体の8割もの方が罹患していると言われている疾患です。
またそれだけ発症するにもかかわらず、基本的には完治させることができません。
もちろん、今現在健康な歯茎を持つ方でも、わずかな期間で歯周病を発症することは十分考えられます。
そのため、歯周病予防はセルフケアやプロフェッショナルケアにより、半永久的に継続しなければいけません。