虫歯や歯周病などの発症を未然に防ぎ、口内の健康を保つのが予防歯科の目的です。
患者さん自身でできる予防歯科としては、毎日のブラッシング以外にも食生活の改善が挙げられます。
また予防歯科に効果的な成分の一つに、カテキンというものがあります。
今回はカテキンが持つ予防歯科効果を中心に解説します。
カテキンの概要
カテキンは、お茶に多く含まれるポリフェノールの一種で、渋味や苦味のもととなる成分です。
1821年、ドイツの化学者であるルンゲがインドの植物であるマメ科アカシア属のペグノキから採取される生薬から、結晶状の物質を分離したことによって発見されました。
その後ドイツの植物学者であるエーゼンベックにより、生薬の名前であるcatechu(カテキュー)を語源として、カテキンと名付けられています。
またカテキンには、エピカテキン・ガロカテキンガレート・エピガロカテキン・エピガロカテキンガレートの4種類があります。
この中でもっとも強力な効果を発揮するのがエピガロカテキンガレートです。
カテキンの虫歯予防効果について
カテキンには虫歯予防効果があることで知られています。
こちらは、さまざまな研究結果からも明らかになっています。
具体的には、緑茶と同程度の濃度のエピガロカテキンガレートは、虫歯の原因菌であるミュータンス菌が糖から酸を産生する働きを抑制することがわかっています。
また同じ研究では、エピガロカテキンガレートには細菌が糖を取り込む酵素の働きを抑制し、歯にプラークが付着するのを阻止する可能性があることも示唆されています。
カテキンの歯周病予防効果について
カテキンには虫歯だけでなく、歯周病予防効果もあります。
2024年8月、東北大学が発表した研究結果により、カテキン成分の一種が歯周病菌に対して強い抗菌作用を示すという研究結果を発表しました。
こちらの研究によると、緑茶に含まれるカテキンの一種であるエピガロカテキンガレートに、歯周病菌の増殖を抑え、死滅させる効果があることがわかっています。
研究は今後も進められるようですが、近い将来、カテキンを活用した新しい歯周病予防方法が誕生するかもしれません。
ちなみに歯周病を予防できるということは、歯周病による口内環境の悪化から来る口臭も予防できるということになります。
参考:東北大学
カテキンが持つその他の効果
カテキンは虫歯や歯周病、口臭の予防効果だけでなく、他にもさまざまな効果を発揮します。
例えば抗酸化作用や抗がん作用、コレステロールや血糖値の上昇を下げる作用などです。
活性酸素は体内の細胞を酸化させ、老化や病気のリスクを高めるものです。
カテキンには、これらの活性酸素を無毒化する抗酸化作用があります。
またカテキンは、がん細胞の抗突然変異抑制作用や、がん細胞の増殖を抑える働きも持っています。
さらに食事中のコレステロールの吸収を抑え排出を促す働きや、食後における腸からの糖吸収を抑える働きなどもあります。
カテキンが多く含まれるもの
カテキンが多く含まれるのは、なんといってもお茶です。
お茶の種類によって含まれるカテキンの種類が変わってきますが、基本的には緑茶などの不発酵茶、ウーロン茶などの半発酵茶、紅茶などの発酵茶のいずれにも含まれています。
またカテキンは発酵の影響を受けやすく、カテキンの中でも生理活性が高い成分として知られるエピガロカテキンガレートは、発酵を止めてつくられる緑茶に多く含まれます。
つまり予防歯科効果を高めたいのであれば、緑茶を積極的に摂取すべきだということです。
ただし、緑茶は茶殻にカテキンが多く残ってしまうため、簡単に調理して茶葉に残ったカテキンも丸ごと食べるのがおすすめです。
調理が難しいというのであれば、茶葉を丸ごと粉末にしているスティックタイプの抹茶などを選びましょう。
ちなみにカテキンはリンゴやサクランボ、ブドウなどの果物のほか、チョコレートやソラマメなどにも含まれています。
そのため、必ずしもお茶でしか摂取できないというわけではありません。
カテキンと相性の良い食品
予防歯科としてのカテキンと相性の良い食品には、レモンやショウガなどの抗菌作用があるものが挙げられます。
レモンにはシトラールという精油成分が含まれていて、ショウガにはジンゲロンやショウガオールといった優れた殺菌力を持つ成分が含まれています。
これらは虫歯菌や歯周病菌に対する殺菌成分も発揮するため、カテキンが含まれる食品と合わせることで相乗効果が期待できます。
またレモンやショウガには独特の酸味や風味があり、食欲増進効果も得ることができます。
まとめ
カテキンは毎日お茶を意識して飲むことにより、簡単に摂取できる成分です。
毎日のブラッシングや定期検診とあわせることで、予防歯科効果は格段にアップします。
ただし、緑茶の飲みすぎはカフェインの過剰摂取につながるため、注意が必要です。
1日のカフェイン摂取量の目安は400mgであり、こちらは緑茶2リットル相当であるため、なるべく超えないように適度な量を摂取しましょう。