虫歯を発症したケースであっても、まだ初期虫歯の場合は歯を削らず、そのまま様子を見ることがあります。
逆に、虫歯が重度にまで進行している場合、ほとんどの歯科クリニックでは根管治療というものが採用されます。
今回は、根管治療の概要とメリット・デメリットについて解説します。
根管治療の概要
根管治療は、歯の根っこの治療、つまり神経の治療です。
抜髄と感染根管治療の2種類があり、抜髄は虫歯が神経に到達して炎症を起こしているとき、神経を含む歯髄を除去するというものです。
一方感染根管治療は、より重度の虫歯や歯周病、外傷などさまざまな理由で歯根が細菌感染を起こしたとき、細菌や汚れを除去する治療です。
いずれにしても、歯の神経に重大な問題が生じているときに行われます。
根管治療のメリット
根管治療のメリットとしては、主に以下のことが挙げられます。
・抜歯を回避できる
・痛みから解放される
・治療費がリーズナブル
各メリットについて詳しく説明します。
抜歯を回避できる
根管治療を行うことにより、抜歯を回避できます。
こちらは健康な歯を残したい方にとって、非常に大きなメリットです。
根管治療後は、型取りを行ってセラミックなどの補綴物を装着し、咀嚼機能を回復させます。
そのため、天然歯を残すことが可能です。
一度抜歯した歯は、二度と元に戻ることがありません。
また、天然歯はどの人工歯よりも高い機能性を持っているため、抜歯を回避するというのはとても大切なことです。
痛みから解放される
根管治療を行うことにより、虫歯の激しい痛みから解放されます。
重度にまで進行した虫歯は、耐えがたいほどの激痛を伴います。
そのため痛みが続いている限り、食事や睡眠、仕事など日常生活のさまざまな場面で支障が出ます。
また神経にまで達した虫歯は、市販薬などで痛みを除去するのも難しいです。
根管治療を受ければ、このような痛みと戦う日々からは解放されます。
治療費がリーズナブル
根管治療は、歯の神経を除去するという大掛かりな治療です。
しかし、保険が適用されるケースもあり、そこまで高額な治療費はかかりません。
保険診療の場合、歯1本につき2,000~5,000円程度で治療を受けることができ、経済的な不安がある方でも受けられる可能性が高いです。
根管治療のデメリット
一方で、根管治療には以下のようなデメリットもあるため、事前に把握しておきましょう。
・歯の耐久性が下がる
・治療回数が多い
・虫歯が再発しても気づきにくい
各デメリットについて詳しく説明します。
歯の耐久性が下がる
根管治療を受けることにより、治療した歯の耐久性は下がります。
こちらは神経を失ってしまうことが理由です。
歯の神経は、痛みを感じる役割だけでなく、内部の血管を通して歯に栄養を送る役割も担っています。
この働きにより、歯は十分な栄養が供給され、強度を保っています。
しかし、根管治療によって神経を取り除くことにより、血管もあわせて除去されます。
つまり、残った歯は栄養源を失った歯だということです。
もちろん歯に栄養が届かなくなると、強度は徐々に低下し、食事の際などに折れたり割れたりする可能性が高くなります。
治療回数が多い
根管治療には、治療回数が多いというデメリットもあります。
こちらは、いくつもの工程を複数回に分けて行う必要があるからです。
具体的には、以下のような治療を1~2ヶ月ほどかけて行います。
・感染部位の除去
・根管内の洗浄
・根管の封鎖
・土台の形成
・被せ物の作製 など
一度の治療でいくつもの工程を同時に行うことはできないため、あまり歯科クリニックに通う時間がない方は煩わしさを感じるかもしれません。
ちなみに根管の形が複雑だったり、何度も洗浄しなければいけなかったりする場合、治療回数はさらに増えることが考えられます。
虫歯が再発しても気づきにくい
根管治療後には、虫歯の再発に気付きにくくなります。
なぜなら、神経が存在しない状態になるからです。
歯の神経の主な機能は、痛みを感知することです。
そのため、激しい痛みがある場合は根管治療によって和らぎますが、その後時間が経って新しい神経が再生するわけではありません。
また一度神経を除去した歯であっても、虫歯が再発する可能性はあります。
このとき、根管治療後の歯は痛みを感知できないため、気付けばまた重度の虫歯を発症していることもあります。
ちなみに、根管治療後は治療箇所に詰め物を装着するため、内部を確認することができません。
つまり、痛みだけでなく見た目でも虫歯の再発を判断しにくくなるということです。
まとめ
虫歯が進行した歯を抜歯せず、なるべく残したいという方にとって、根管治療はもっとも最初に検討すべき治療です。
虫歯の激しい痛みがある場合も、基本的には根管治療を受けなければ改善されません。
ただし根管治療は治療回数が多く、なおかつ歯の耐久性を低下させることにもなるため、しっかりメリット・デメリットを把握した上で治療を受けましょう。
歯科医師に相談すれば、別の治療法を提案してもらえる可能性もあります。